環境規制による自動車産業の変革 

KPMGによる本レポートは北米、欧州、アジア及びラテンアメリカにおける政府規制の概略を紹介し、世界の自動車産業に与える影響を分析しています。

 

要旨

低炭素排出車に対する消費者ニーズの高まりを受けて世界の自動車産業は根本的な変質を遂げつつあります。各国政府は排出物質の抑制と燃費効率に関する厳しい環境規制を自動車メーカーに課すことで、このような市場からの要望に対応しました。こうした規制は地域ごとに著しく異なり、自動車メーカーが世界で販売している車両の種類をより複雑なものにしています。その結果、世界の自動車メーカーと部品メーカーは数々の地域的な規制要件を満たすために、常に自社製品のポートフォリオの更新を要求されており、生産コストの大きな増加につながることが予想されます。

 

世界的に見ると道路運輸(乗用車及び商用車)は人によるCO2排出の14%を占めています。1新しい車のCO2排出はかなり減っているものの、道路運輸は依然として排出量が増え続けている数少ないセクターの一つとなっています。貨物輸送の増加、自動車の保有及び走行距離の増加がその原因です。例えば欧州連合(EU)では1995年から2003年にかけて自動車利用者の年間走行距離が16.4%増加しています。従来の車両ではタンクに入れた燃料が生むエネルギーの僅か15%が車両を動かすことに使われ、残りは摩擦損失として無駄になっています。2

これは燃費効率改善のとてつもない機会が未だに存在することを示唆しています。自動車メーカーはCO2排出量の削減を優先度の高い目標として掲げました。自社のモデル群の炭素排出量を大きく削減するために、自動車メーカーは大量生産モデルに適用可能な最もコスト効率の優れた技術に重点を置いています。「万人に環境に優しい車を」提供するという戦略に沿ったものです。この目標を達成するための自動車メーカーの戦略は以下に集中しています:

 

  • 燃費効率の改善と炭素及び汚染物質の排出削減
  • 化石燃料(天然ガス)又は再生可能燃料(バイオ燃料)で走る代替燃料車の開発
  • ハイブリッド車及びEVのコスト効率の向上による電動化技術

 

政府による奨励制度はこうした技術の大規模な採用を加速する上で極めて大きな役割を果たすと予想されますが、政府の対応は世界各地で大きく異なっています。米国政府はこのところ自動車用電池や電気自動車の分野における新規事業への資金提供によってベンチャー・キャピタリストとして行動しイニシアチブをとっていますが、日本政府は低燃費車に対する時限的な補助金の支給を通じてこうした事業に間接的に資金を提供するにとどまっています。中国政府は新エネルギー車(NEV)や電池開発の熱烈な支持者となっていますが、従来の内燃機関技術の開発によって欧米のメーカーに追い付き追い越すことは不可能であることを中国の自動車メーカーや部品メーカーは承知しているからです。

 

規制の枠組みが世界各国で異なり、各地域の基準を単一のグローバル基準に統一する意志も方向性も存在しないことから、リスクを最小限に抑えリターンを最大化するために企業は多面的な戦略の展開を選択するかもしれません。全ての自動車メーカーが種々多様なグリーン技術を模索していますが、特定の市場で提供される解決策の選択は地域的な嗜好によって決定されます。例えば、ストップ・スタート技術は日本と欧州では幅広く採用される見込みですが、北米での取り込みは限定的になると予想されます。同様に、中国の自動車メーカーは小型車の生産を増やすことに軸足を移しており、この結果2013年までに同国が最大のNEV生産国になる可能性もあります。

 

消費者、政府機関及び自動車関連会社が自動車業界の構造転換に与える影響力の度合いは世界各地で大きく異なります。世界的な不況、過剰設備、そして厳しい環境規制による圧力の組み合わせは広範囲にわたるセクターの統合へと繋がっており、それはこの先何年も増え続ける可能性があります。第三節で詳述されていますが、KPMGの調査結果は最も魅力的なM&A取引の組み合わせは北米=アジア、次いで欧州=アジア、北米=欧州の順である可能性を示唆しています。こうした潜在的な傾向はフォルクスワーゲン=スズキ、ボッシュ=サムスン、PSA=三菱自動車等々の最近の国境を越えた合併や提携に向けた動きとも整合性があります。企業が更に水平・垂直統合の機会を求める中でこうした傾向は強まることが予想されます。

 

Regional CO2 Emission Regulations

 

Regional CO2 Emission Regulations

Note: EDC - New Europe Drive Cycle

 

Source: The International Council on Clean Transportation, Passenger Vehicle Greenhouse Gas and Fuel Economy Standards: A Global Update

 

Regional Fuel Economy and GHG emission standards

Regional Fuel Economy and GHG emission standards

Source: The International Council on Clean Transportation, Passenger Vehicle Greenhouse Gas and Fuel Economy Standards: A Global Update

 

将来最も打撃を受ける部品メーカーは燃費改善又は排出抑制の要求を満たさない月並みな製品の企業かもしれません。一方、応用の利く技術・知識を持っているその他多くの部品メーカーは、業界内での自らの立ち位置変えることでき、今後厳格化が見込まれる規制から恩恵を受ける可能性があります。業界が新たなビジネスモデルに向かって代替パワートレイン(伝導機構)や低燃費技術によって革新を進める中、将来の業界地図が今日とは大きく異なるものになることは明白です。

 

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The Transformation of the Automotive Industry: The Environmental Regulation Effect (日本語訳)
(PDF / 1.57 MB)

 

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江口 良
Transactions and Restructuring Services, KPMG in the U.S.
reguchi@kpmg.com
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小島 秀晴
Transactions and Restructuring Services, KPMG in the U.S.
hideharukojima@kpmg.com
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