税務アップデート 

「税務アップデート」では、毎号、米国の税務に関する法令やその他の動きで、在米日系企業の皆様が関心を持たれると思われる事柄に関する最新情報を提供しています。内容に関するご質問は、貴社担当パートナーまでお問い合わせください。

 

 


 

20104

 

2009年度APA年次報告書を発表

IRSは、2009年度(暦年)の事前価格合意(APA)プログラム年次報告書を発表しました(Announcement 2010-21)。

 

処理件数等:

 

  2009年 累計
(1991年~)
米国内 二国間 多国間 合計
申請件数 39 88   127 1,379
締結件数 新規 9 18 0 27 582
更新 8 20   28 261
修正 4 4   8 61
審査中件数
(年度末)
新規 47 174   221 N/A
更新 23 108   131 N/A
破棄件数 0 0   0 9
申請取下件数 6 8   14 146

 

平均審査期間(月):

 

  新規 更新 全体
米国内 25.5 20.5 23.6
二(多)国間 45.4 44.9 45.1
全体 38.0 37.9 37.9

 

2009年から2010年にかけて、申請件数(123件→127件)および合計締結件数(68件→63件)に大きな変化は見られませんでしたが、申請件数が締結件数を大きく上回る状況が続いているため、年度末現在での審査中件数は、前年度の303件から352件へと大幅に増加しています。平均審査期間は、米国内APAについては2.1ヶ月、二(多)国間APAでは3.0ヶ月短縮されています。

 

関連会社の関係については、外国法人と米国子会社間の取引に関する締結件数が依然大きな比重を占めています。

 

  2005年 2006年 2007年 2008年 2009年
外国法人と米国子会社 34 42 52 52 45
米国法人と外国子会社 16 36 28 17 16
外国法人の米国支店 3 0 3 3 0
パートナーシップ 0 4 0 0 3

 

IRS:法人税の不確実な取り扱い関する報告様式および記入要綱の草案を発表

IRSは、法人税の不確実な取り扱いに関する報告書(スケジュールUTP)および記入要綱の草案を発表しました(Announcement 2010-30)。背景としては、本年1月、連邦法人税額に影響を及ぼす法人税の不確実な取り扱いに関する情報の開示を特定の納税者に義務付けるための様式を作成中であることが発表され(Announcement 2010-9)、その後2010年3月には、米国財務会計基準解釈指針第48号(FIN 48)または国際会計基準等に基づく法人税の不確実な取り扱いに関する情報の開示義務は、暦年2010年度中に開始する課税年度から適用する方針が発表されました(Announcement 2010-17)。

 

今回発表された記入要項草案の骨子は、次の通りです。

 

  • 次のすべての要件を満たす納税者は、スケジュールUTPの提出義務を負う。①法人税の不確実な取り扱いが存在する。②保有する総資産が1,000万ドル以上である。③監査済財務諸表を作成している、もしくは財務データが関連者の監査済財務諸表に含まれている。④法人税申告書(様式1120)、保険会社用法人税申告書(様式1120Lまたは1120PC)、外国法人用法人税申告書(様式1120-F)(損金算入等の権利を保留する目的で形式的に申告書を提出するプロテクティブ・ファイリングを含む)のいずれかを提出している。
  • スケジュールUTPのパートIには、申告書を提出する60日前までに引当の決定がなされた当期分の不確実な取り扱いを記載する。スケジュールUTPのパートIIには、申告書を提出する60日前までに引当の決定がなされた前期分の不確実な取り扱いを記載する。すでに過去の年度に報告した不確実な取り扱いを再度報告する必要はない。
  • IRSの税務調査における慣行や、訴訟を行う方針に基づき引当を計上していない不確実な取り扱いについても報告しなければならない。
  • それぞれの不確実な取り扱いについて、否認された場合の最高追徴額(Maximum Tax Adjustment - MTA)を推算・開示しなければならない。損益に関する取り扱いについては、最高更正金額に35%を乗じた額、税額控除に関する取り扱いについては、最高否認額を開示する。最高追徴額には、利子税や重加算税は含まない。外国税、州税、地方税の影響は考慮しない。
  • 資産価値評価もしくは移転価格に関する最高追徴額の報告は必要なし。ただし、不確実な取り扱いが資産価値評価もしくは移転価格に関するものであることを示し、会計上の連邦税に関する引当額もしくは連邦税の推定追徴額に基づく順位付けを開示する。例えば、移転価格に関する不確実な取り扱いについては、スケジュールUTPの最高追徴額の欄に「TP」と記載し、その後に移転価格に関する不確実な取り扱いの中での順位を付け加える(「TP1」、「TP2」等)。
  • 2009 年12月14日以前に開始する課税年度における取り扱いに関する報告は必要なし。

 

IRSでは、草案に対する一般からのコメントを本年6月1日まで公募しています。

 

20103

 

「雇用回復のための採用支援法」による税法改正

2010年3月18日、「雇用回復のための採用支援法(HIRE)」がオバマ大統領の署名により成立しました。同法に基づく財政支出は向こう10年で約180億ドルですが、同法に含まれる増税条項により財源は確保される見込みです。同法による主な税法改正は、次の通りです。

 

  • 失業者の採用と継続雇用の支援:適格雇用者は、同法成立後2010年末までに支払われる適格従業員に対する給与について、社会保障税のうちの老齢・遺族・障害保険(OASDI)税部分の納付を免除される。また、適格従業員を最低52週間継続雇用すると、一人あたり最高$1,000の一般事業税額控除が与えられる。
  • 固定資産の一括損金算入:内国歳入法第179条に基づく減価償却対象となる固定資産の一括損金算入額の暫定増額措置が1年延長され、2010年中に開始する課税年度に使用に供される適格資産の取得原価の損金算入上限額は25万ドルとなる(ただし、取得原価総額が80万ドルを超える場合、当該超過額をもって上限額は減額される)。
  • 適格税額控除債:特定の適格税額控除債の発行者は、発行日以前に選択手続(撤回不可)を行うことにより、債券の保有者に税額控除を与える代わりに、内国歳入法第6431条に基づく支払いを受け取ることができる。
  • 現行の地上交通網プログラムの延長:高速道路信託基金ならびに遊漁場回復信託基金の支出権限を2010年末まで延長するとともに、高速道路信託基金に関する諸規則を変更する。
  • 国外口座等に関する申告義務:2009年11月に連邦議会上下両院に提出された国外口座申告法案(FATCA)の内容に沿い、国外口座等に関する申告義務を強化する。
  • 外国人が受け取る代替配当金等:有価証券の貸借取引、レポ取引、特定の想定元本取引等により、米国源泉の配当に基づき支払われる代替配当は、米国源泉所得として取り扱い、30%の源泉税の対象とする。
  • 利息の全世界按分制度の適用延期:利息の全世界按分制度の適用開始を3年間延期し、2021年1月1日以降に開始する課税年度からとする。
  • 法人税の予定納税:2014年、2015年、2019年度中の特定の法人税予定納税額を増額する。

 

医療改革法による税法改正

「患者保護・医療費負担軽減法(PPACA)」が大統領の署名により、2010年3月23日付で成立しました。また、PPACAの条文を一部修正する「2010年医療・教育調整法(HCERA)」が同3月30日付で成立しました。これらから成るいわゆる「医療改革法」に含まれている主な税法改正条項は、次の通りです。

 

  • 個人関連:2013年以降、特定の投資からの純利益もしくは納税者の調整後課税所得が基準額(夫婦合算申告の場合は25万ドル、独身者の場合は20万ドル、夫婦個別申告の場合は12万5千ドル)を超える額のいずれか低い方に対し、3.8%の税率で課税する新税を導入する。また、2013年以降、前述の基準額を超える給与について、従業員負担分のメディケア税(現行1.45%)の税率を0.9%上乗せする。2014年以降、最低限の必須医療保険の未加入者には罰金が課せられる一方、取引所を通じて健康保険を購入する際の補助金として、適格個人もしくは家庭に対し、還付可能な税額控除(「保険料補填税額控除」)を与える。2013年以降、医療費の項目別控除の足切り制限額を調整後総所得の7.5%から10%に引き上げる。
  • 特定の産業および雇用者に対するフィーの賦課:2011年以降、特定の政府プログラムを通じて販売される(もしくは、特定の政府プログラムに基づく保険の対象となる)ブランド処方薬の製造もしくは輸入を行う特定の企業に対してフィーを賦課する。2013年以降、特定の医療用機器の製造者、製作者、輸入者に対し、売上の2.3%相当の課税を行う。2014年以降、米国内で健康保険の提供を行う特定の事業者に対してフィーを賦課する。
  • 雇用者関連:「適格小規模雇用者」が従業員の適格健康保険料の50%以上を負担する場合、2010年から2013年の間に開始する課税年度において、負担額の35%相当(2014年以降は50%相当)の税額控除を受けることができる。2014年以降、「最低限の必須医療保険」を妥当なコストで提供していない、あるいはフルタイムの従業員の医療関連の福利厚生コストを60%未満しか負担していない「大規模雇用者」については、フルタイム従業員が州立の取引所を通じて保険に加入する際に税額控除やコストシェアリング補助を受けると、罰金の対象となる。2018年以降、個別の従業員に対する雇用者負担の健康保険の総額が基準額を上回る場合、保険会社に対して40%の物品税を賦課する。
  • 事業者関連:経済実体を伴わない取引に起因する申告漏れに対して、40%(適切な開示がなされている場合には20%)のペナルティーを賦課する(立法後直ちに施行)。2012年以降、事業者は、暦年中の支払総額が$600以上 となる取引先については、取引先が法人(非課税法人を除く)であっても、支払調書を発行しなければならない。特定の治療方法発見プロジェクトへの適格投資に対し、50%の投資税額控除の形で総額10億ドルの資金を交付する。総資産10億ドル以上の法人の2014年中の法人税予定納税額を増額する。

 

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本文中の税務アドバイスは、弊社クライアントもしくはその他の個人や事業体が、①納税者に対して賦課される可能性があるペナルティーの回避を目的として使用することや、②調査対象事項について宣伝、マーケティング、推奨等を行うことを意図したものではなく、従ってこれらの目的には使用できません。

 

記事中の見解や意見は著者個人のものであり、必ずしもKPMG LLPのものではありません。また、記事中の情報は全て一般的なものであり、特定の個人もしくは事業体の状況への適用を意図したものではありません。