「KPMGグローバルCEO調査2023」を発表

世界のCEOは地政学的圧力等の課題に取り組む一方、大部分は3年間の世界経済の見通しに自信を持っている

KPMGは、世界の経営者の将来見通しや重要施策等を調査した、9回目となる「KPMGグローバルCEO調査2023」を発表しました。

  • 地政学と政情不安は、2022年は上位5つには入らなかったものの、今回の調査では成長に対する最大のリスクとしてランクインしている
  • CEOはオフィス勤務復帰のジレンマをますます考慮するようになっており、87%が報酬、昇給、昇進と出勤の関連付けを検討している
  • CEOの68%が、現在のESGの進捗状況は、利害関係者や株主の潜在的な監視に耐えられるほど強固なものではないと回答している
  • CEOは、生成AIの導入時の最大の懸念事項として倫理的課題を挙げている(57%)

KPMG(チェアマン:ビル・トーマス)は、世界の経営者の将来見通しや重要施策等を調査した、9回目となる「KPMGグローバルCEO調査2023」を発表しました。本調査は、2023年8月15日から9月15日に、11ヵ国11業界の企業経営者1,300人以上に対して、経済およびビジネスの展望に関する今後3年間の見通しについて調査しています。

本調査によると、2022年の調査では上位5つにも入らなかった地政学と広範囲にわたる政治的不確実性が、今年の経営幹部が事業成長にとって最大のリスクとして認識していることが明らかになりました。
また、今後3年間の世界経済の見通しに対する自信は、2022年の調査(71%)とほぼ変わらないものの(73%)、事業のリスクの構成要素に対するCEOの見解は大きく変化していています。

CEOの4分の3以上(77%)が、金利上昇や金融引き締め政策によって世界不況のリスクが生じたり、その脅威が長引いたりする可能性があると回答している一方、CEOの4分の3以上(77%)は、生活費の圧迫が今後3年間、企業の繁栄に悪影響をおよぼす可能性が高いと考えています。

世界政治、貿易動向、国際関係における絶え間ない変動により、CEOは戦略的優先順位を再評価し、世界の政治勢力での複雑な相互作用の中でレジリエンスを発揮することを余儀なくされています。

KPMGインターナショナルのグローバルチェアマン兼CEOのビル・トーマスは、次のように述べています。
「ビジネスリーダーは、地政学的な不確実性や政治問題化から、ESG領域におけるステークホルダーの期待の高まり、そして生成AIの導入に至るまで、さまざまな面で成長への課題や障害に直面しています。私が心強いと思うのは、現在マクロ経済や地政学的な課題が山積しているにもかかわらず、中期的な世界の景況感が比較的堅調に推移していることです。やがて国際的に持続可能な長期成長路線に戻れるというコンセンサスがあります。CEOにとって、より公平で‟成功した世界”へ回帰するチャンスは目の前にあります。成功への鍵は、長期的、戦略的な計画に絶えず焦点を当て、不確実性の高い時期に常に脅威となる短期的で消極的なリーダーシップの危機を回避することに尽力することだと考えます。」

ハイブリッドワークとオフィス勤務回帰をめぐる議論は続く

CEOは、パンデミック以前の働き方を支持する姿勢を強めており、過半数(64%)が今後3年以内にオフィス勤務に完全回帰すると予測しています。調査対象となったCEOの87%が、金銭的報酬や昇進の機会をオフィス勤務への回帰に結びつける可能性があると表明しています。

KPMGインターナショナルの人材部門グローバルヘッドであるヌラム・ドロムは、次のように述べています。
「この調査結果は、CEOが大きな問題に対して迅速な決断を迫られていることを浮き彫りにしています。経済が不透明な今、人材争奪戦は和らいでいるかもしれませんが、オフィス勤務に対する画一的なアプローチは弊害をもたらすかもしれません。リーダーは、優秀な人材を育成しサポートするために、従業員の価値提案を受け入れ、すべての人の懸念やニーズを包合する長期的な視野を持つことが極めて重要です。」

両極化する議論にもかかわらず、CEOはESGを優先し続ける

ESGをめぐる議論が1年にわたり両極化しましたが、CEOは、環境、社会、ガバナンスの問題に対処することが、事業運営や長期的な企業戦略にとって不可欠な要素であることを認識しています。このことは、価値創造の手段としてESGをビジネスに組み込んでいるCEOの69%が支持しています。

ESGに対する認識と対話の変化を反映し、CEOの35%が社内外でESGに言及する際の言葉を変えています。これは、CEOがESGの各側面についてより具体的に理解するとともに、最も影響力のあるところに優先的に取り組む傾向を示しています。一方で、ESG投資の見返りを得られるのはまだ数年先と考えており、ESGが今後3年間で、顧客関係、ブランド評価、M&A戦略に最も大きな影響をおよぼすと考えています。

CEOは、自分たちの役割が世間や投資家の圧力によってますます大きくなっていることを理解しており、64%が一部の制度に対する信頼が低下するにつれて、世間は社会の変化の空白を企業が埋めることを期待していると考えています。

KPMGインターナショナルのESG統括グローバルヘッドであるジョン・マカラリーシーは、次のように述べています。
「経済的・政治的な不確実性が高まっているにもかかわらず、今回の調査結果は、ESGに対するCEOの回復力と集中力の高まりを反映しています。気候危機のような話題は、地域によっては二極化していますが、ビジネスリーダーは、より持続可能な事業への移行を推進する上で、積極的な役割を果たし、すべての人に利益をもたらすために厳しい倫理的な決断や姿勢を取る準備ができていると語っています。財務的・地政学的な圧力が続く中、多くのCEOにとって神経を使う試練となることは間違いありませんが、この調査結果から、大多数の経営幹部は現在、E(環境)、S(社会)、G(ガバナンス)が、持続可能なビジネスを成功させるためのオプションではないことを認識し、全面的に取り組んでいることが分かります。」

生成AIを取り巻く倫理的課題がある一方、投資は抑制されていない

調査結果によると、CEOは将来の競争力を求めて生成AIに多額の投資を続けており、この技術を中期的な最優先事項として挙げています。CEOの70%は、生成AIが依然として優先事項の1つだと考えており、その大半(52%)は投資に対するリターンが3~5年後に得られると期待しています。

投資を推進する意欲がある一方で、CEOは生成AIの導入に関する懸念事項の第1位に倫理的な課題を挙げています。第2位は導入コスト(55%)、第3位は規制や技術的能力の欠如(50%)でした。

KPMGインターナショナルのグローバル最高デジタル責任者であるリサ・ヘネガンは、次のように述べています。
「生成AIは、その可能性をよりよく理解し、ビジネス戦略に導入する方法を模索しているリーダーたちの間でますます注目を集めています。課題は、適切な場所に資金を投入し、AIがもたらす機会を十分に活用するための適切なスキルを持つことです。CEOは、責任ある強固なAIのフレームワークを開発または採用し、従業員のスキルアップを図り、セーフガードとガバナンスに徹底的に注力することで、AIが企業、従業員、そしてより広い社会のために真に価値を解き放つことができることを強化し、前面からリードすることが不可欠です。」

(本プレスリリースは2023年10月5日にKPMGインターナショナルが発表したプレスリリースの日本語翻訳版です。内容および解釈は英語の原文を優先します。)

「KPMGグローバルCEO調査」について

9回目となる「KPMGグローバルCEO調査2023」は、2023年8月15日から9月15日に企業の経営者1,325人を対象に実施され、CEOのマインドセット、戦略、計画戦術に関する洞察を調査しています。

すべての回答企業の年間収益は5億米ドルを超えており、対象企業の3分の1は年間収益が100億米ドルを超えています。本調査は、主要な11カ国(オーストラリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、スペイン、英国、米国)と11業界(資産運用、自動車、銀行、消費者・小売、エネルギー、インフラ、保険、ライフサイエンス、製造、技術、通信)の企業経営者を対象としています。

注)いくつかの数値に関しては四捨五入を行っているため、必ずしもその合計が100%にならない場合があります。

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