本連載は、日本経済新聞(2023年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

Z世代のSNS事情とマーケティング戦略

「ソーシャルネイティブ」と呼ばれるZ世代の重要な情報収集源がSNSです。
「SHIBUYA 109 lab.」の調査によると、Z世代の新商品認知経路の上位3つは、SNSが独占しており、「Instagram」「X(旧Twitter)」「YouTube」の3つです。インフルエンサーが紹介する商品を購入した経験がある人の割合は60%にのぼっており、SNSの活用はZ世代にアプローチするうえで欠かすことができません。しかし、単に「SNSで多くの人の注目を集めること」を狙うだけでは、ツボを押さえることは困難です。

Z世代が注目する新興SNSに「BeReal.」と「whoo」があります。
「BeReal.」は「盛らない」日常を投稿する写真共有アプリで、1日に1回だけ来る通知を受けて、2分以内に撮影して投稿するのがルールです。ゲーム感覚を楽しみつつ、友人と素に近い瞬間を共有できるため、より親密になれると人気です。「whoo」は、自分と友人の現在地、滞在時間、移動速度などがわかる位置情報共有アプリで、ユーザーの8割を中高生世代が占め、待ち合わせやメッセージ機能によるコミュニケーションを楽しむために使われています。2022年末にリリースされ、瞬く間に1000万以上のダウンロードを記録したと言われています。友人同士で位置情報を共有し合うことで、会話のきっかけを見つけられる・煩わしい予定調整のやり取りをしなくて済むなど、時間のコストパフォーマンスの良さが人気の理由のようです。

新興SNSの人気ぶりから、Z世代は他者と常につながる接続時代の世代であり、人間関係を深めるツールとしてSNSに価値を置いていることが見えてきます。着目したいのは、SNSで築かれる人間関係が、価値観や趣味などを同じくする人で構成されるオンライン上のコミュニティにも広がることです。この点が、Z世代がソーシャルネイティブと呼ばれる所以であり、企業がSNSを介してこの世代にアプローチするヒントになると言えます。

カジュアル衣料の「WEGO」を運営するウィゴーは、Z世代のコミュニティに特化したSNSを運営する企業の1つです。高校生活の楽しみ方や推し活など、コミュニティごとにアカウントを分けて情報を発信しています。Z世代に人気の多数のインフルエンサーとコラボするなど、高校生を対象としたSNSでは、年間リーチ数が1億以上にものぼると言われています。

趣味嗜好が同じ人々が集まるコミュニティの境界線を見極め、インフルエンサーも活用しながらコミュニティごとにきめ細かなコンテンツを発信し、参加者同士のコミュニケーションを活発にすることで、企業のブランドに対するZ世代のエンゲージメントも高めることができます。

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日経産業新聞 2023年9月28日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング
シニアコンサルタント 髙野 洋介

Z世代マーケティング

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