本連載は、日本経済新聞(2023年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

Z世代のゲームとの関わり方

「ソーシャルネイティブ」と呼ばれるZ世代は、テレビ視聴などコンテンツの受動的な消費だけでなく、コンテンツを中心に形成されるコミュニティを重要視します。
動画投稿サイト「YouTube」などの動画配信サービスは、配信者と視聴者の間でコミュニケーションできるコメント機能、配信者を応援するスーパーチャット機能、コミュニティ内で交流できるメンバーシップ機能などを提供することでコミュニティ形成を支援しています。
近年、ゲーム対戦競技「eスポーツ」やメタバース(仮想空間)が話題ですが、いずれもコミュニティが形成されており、その中心にはZ世代が存在しています。

では、Z世代に人気のコンテンツは何でしょうか。それはゲームです。
オランダの調査会社ニューズーによると、Z世代の約8割がゲームを経験しており、1週間の平均プレー時間は7時間以上といいます。読書、音楽、テレビなど他の娯楽と比較しても、Z世代は可処分時間に占めるゲームに費やす時間が多く、他の世代と比べて顕著という結果もあります。
特に、日本のZ世代は米国や韓国などのゲーム消費額が大きい主要国のなかでも月平均の利用時間とセッション回数が多いという調査結果があり、ゲームに対するエンゲージメント(関わり)が非常に高いとされます。自身でプレーするだけでなく、ゲーム視聴という点でもZ世代のエンゲージメントの高さが目立っています。
総務省によると、10代のインターネット利用時間の内訳は、動画共有サービス(35%)、SNS(交流サイト)(25%)、ゲーム(13%)となっています。※1動画共有サービスで10代・20代男性が好きなジャンルはいずれもゲーム実況が1位という調査結果もあります。つまり、インターネット利用の多くがゲームをプレーしているか、視聴しているかということです。

ゲーム会社もゲームファンのコミュニティ形成を支援しています。ゲーム内でユーザー同士が会話できる音声通話機能、仲良くなったユーザーをリスト登録できるフレンド機能、グループ単位でコミュニケーションできるグループ機能などを用意しています。またゲーム以外でもユーザーのコミュニティ形成を支援するツールが開発・利用されています。Z世代はこうした機能やツールを積極的に利用しゲームを通じてコミュニティを形成しています。

ニューズーによると2022年の世界のゲーム市場規模は約24兆円で2025年には27.6兆円になると見込んでいます。
企業のメタバースへの関心が盛り上がり、コンテンツ提供企業ではない事業者はゲームが持つ力を少しでもビジネスに生かせないかと、メタバースの活用を模索しはじめています。現在ゲームに熱中している若い世代もいずれ大人になっていきます。すべての世代でゲームがより身近な存在になり、ゲームが持つ影響力は今後ますます大きくなっていくでしょう。

※1:総務省「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」

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日経産業新聞 2023年9月26日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング 
シニアマネジャー 岩田 理史

Z世代マーケティング

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