本連載は、日本経済新聞(2023年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

Z世代の購買における意思決定プロセスと影響力

Z世代の中核である10代では、テレビを見る時間が減る一方、インターネット利用に費やす時間が大きく増えています。また、多様なコミュニティに所属し積極的に情報発信する傾向もあります。コミュニティこそが彼らの情報源であり、自身も情報提供者となっています。

Z世代の購買行動モデルは、従来のマス広告で主流の「AIDA」から、主要タッチポイントをスマートフォンとし、コミュニティの影響を受けることを考慮した「5A理論」に変化しています。
これまでのマーケティングでは、ブランド認知の手段は新聞やテレビなどのマス広告が中心でしたが、Z世代は従来メディアではなくSNSや動画共有サービスを通じて新商品やブランドを知る傾向があります。さらに広告よりも自身が所属するコミュニティ内の情報を信頼し、購入・批判・推奨などの行動に影響を受ける傾向もあります。

購入の決め手になるのは、コミュニティ内の情報や個人の嗜好に合わせた提案、スマートフォンのアプリから容易に入手できるリアル店舗での来場者特典等となっており、オンラインとリアル双方での高い顧客体験(CX)の提供が必要になっています。
また、前述したように、Z世代の購買行動には、信頼している人からの推奨が大きな影響を与えます。企業が発信するブランド情報には依存せず、自らの判断で推奨者として発信する傾向があるため、Z世代へのマーケティングでは、いかに推奨者を醸成できるかが重要です。

Z世代の特徴的な消費行動の1つに、米Googleが提唱する「パルス型消費」があります。「パルス型消費」とは、買い物のタイミングや場所を問わず24時間いつでもどこでも、空き時間にスマートフォンを操作しながら瞬時に購入を決める行動のことです。購入するのにじっくり時間をかけて検討する従来の購買行動に対して、商品やサービスの認知から購買までの時間軸が非常に短い購買行動と捉えるとわかりやすいでしょう。

パルス型消費行動のきっかけとなるのは「6つの直感センサー」とされます。具体的には「Safety(より安心安全なものを望む)」「Follow(売れているもの・第三者が推奨するものを望む)」「For me (自分らしいものを望む)」「Power save(労力をかけずに購入できる)」「Cost save(お得なものを望む)」「Adventure(興味をそそるものを望む)」の6つを指します。

Z世代は「信頼できる人からの推奨」商品・サービス=「信頼」できる商品・サービスという価値観を持ち、コミュニティ内で自分らしさを表現する傾向や、購買に至るまでのCXを重視することから、「Safety」「Follow」「For me」「Power save」の意識が強く、パルス型消費が発生しやすくなっていると思われます。

※本文中に記載されている会社名・製品名は各社の登録商標または商標です。

日経産業新聞 2023年9月22日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング 
シニアマネジャー 岩田 理史

Z世代マーケティング

お問合せ