本連載は、日本経済新聞(2023年9月~10月)に連載された記事の転載となります。以下の文章は原則連載時のままとし、場合によって若干の補足を加えて掲載しています。

Z世代の消費行動の特徴と有効なアプローチ

今後の消費のカギを握ると言われるZ世代は、生まれた時からパソコンやスマートフォン、SNSが普及していた世代です。本連載では、Z世代へのマーケティングに不可欠なデジタルコンテンツの活用について解説します。

本稿では、Z世代を1997~2009年生まれと定義します。経済産業省によると、世界でZ世代の人口が占める割合は2020年時点で24%、購買力は15兆円にのぼっています。米国では、総消費の40%をZ世代が占め、その購買力は5兆円にのぼり将来は22兆円へと成長すると予想されています。2042年までに30兆ドル以上の資産がベビーブーマー世代(1946~1964年生まれ)から若い世代に移行しZ世代の購買力は今後さらに高まると予測されています。
少子高齢化が進む日本では、Z世代が占める割合は他国に比べて低いですが、Z世代の消費額は増えていき、消費の主役になっていくと考えられます。 

企業はZ世代にどうアプローチすればよいのでしょうか。
まず世代ごとの特徴を理解する必要があります。特徴はその時代の社会情勢に影響されますが、なかでも技術動向の影響が大きいと言えます。スマートフォンやSNSが普及した時代に育ったZ世代は、デジタルリテラシーが高いだけでなく、オンライン上でのコミュニケーションも得意としています。
彼らは、インターネットに代表されるITの成長期に育った「デジタルネイティブ」と呼ばれるミレニアル世代(1981~1996年生まれ)から一歩進んだ「ソーシャルネイティブ」と呼ばれます。

Z世代は、複数のアカウントを使い分け、さまざまなコミュニティで積極的にコミュニケーションをとる特徴があります。多様なコミュニティに所属し、人と人とのつながりが広いだけに、コミュニティ内の情報よりもウェブサイト上の口コミやレビューサイトの情報を重視する傾向にあるミレニアル世代に比べ、情報を慎重に判断し、信頼している人の意見を重視する傾向があります。

また、情報発信に対する意欲が高いという特徴もあり、人の関心に合わせたコンテンツや提案などを好む傾向にあります。商品やサービスにブランドや社会的ステータスを重視するX世代(1965~1980年生まれ)向けにはモノ自体の価値を高めればよかったのですが、ミレニアル世代以降は、モノの所有より、商品やサービスを知って購入に至るまでの顧客体験を重視するようになってきています。
Z世代攻略には、どういったコミュニティに所属しているのかを見極め、リアルとオンラインでどのような顧客体験を提供するかが、重要なポイントになります。


【各世代と比較したZ世代の特徴】

  X世代 ミレニアル世代 Z世代
定義 1965~1980年生まれ 1981~1996年生まれ 1997~2009年生まれ
技術背景 デジタルイミグラント デジタルネイティブ ソーシャルネイティブ
コミュニティ
  • ローカルコミュニティ中心(会社・部活)
  • ローカルコミュニティ内での自己表現
  • ローカルコミュニケーションだけでなくオンラインのコミュニケーションにも所属
  • オンラインでの自己表現を重視
  • 多様なコニュニティに所属し、情報発信も積極的
  • 複数のアカウントを持ち、所属コミュニティに応じて多様な自己表現
消費動向
  • 友達・社会などのローカルコミュニティの影響
  • ブランドや社会的ステータス重視
  • 口コミとオンラインレビューの影響
  • コト消費。購買までの体験も重視
  • 信頼している人からのレコメンドの影響
  • リアル・デジタルでのコト消費。購買までの体験も重視

 

本連載では10回にわたり、今後の消費のカギを握るZ世代に向けた効果的なマーケティング施策を行う上で、押さえておくべきポイントをテーマ別に解説していきます。

日経産業新聞 2023年9月21日掲載(一部加筆・修正しています)。この記事の掲載については、日本経済新聞社の許諾を得ています。無断での複写・転載は禁じます。

執筆者

KPMGコンサルティング 
シニアマネジャー 岩田 理史

Z世代マーケティング

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