高まるコーポレートPPAの機運とステークホルダーのジレンマ ~市場概観、課題と展望~

2050年のカーボンニュートラルに向け、日本市場ではコーポレートPPAを通じた再エネ調達が進められています。本稿では、コーポレートPPAの外部環境と課題を整理し、需要家と供給事業者のギャップを明らかにしながら、今後の展望について考察します。

本稿では、コーポレートPPAの外部環境と課題を整理し、需要家と供給事業者のギャップを明らかにしながら、今後の展望について考察します。

日本における再エネ電力市場の概観

需要家のグリーン電力調達手段として注目が高まるコーポレートPPA

2022年に開催されたCOP27をうけ、電力需要家によるグリーン電力調達要請の潮流が徐々に広がりを見せています。日本では、2050年までに事業運営に使用する電力を100%グリーン化することを標榜する世界的企業連合「RE100」へ加盟する企業が年々増加しています。しかし、加盟企業でも、グリーン電力の調達手法として、需要家企業が発電事業者と長期電力購入契約を締結するコーポレートPPAを、国内市場で採用するケースは多くありません。

国内再エネ市場を取り巻く外部環境の変化を背景に、「買い手が売り手を選ぶ」と同時に「売り手も買い手を探す」動きが活発化

日本におけるコーポレートPPAを取り巻く状況は、需給双方における市場環境を追い風に、変化を遂げつつあります。

需要家
近年では、あらゆる業種の需要家が、サプライチェーン全体におけるGHG削減要請の高まりに直面しています。その結果、需要家にとってグリーン電力調達は、企業の先進性から、ビジネスの存続・事業拡大要件へと変化しています。

供給事業者
2022年4月のFIP制度導入により、発電事業者や小売事業者などの供給事業者のコーポレートPPAへの取組みが変化しています。安定性が高く需要家にとっても有効な手段である洋上風力事業への影響は大きく、2030年以降の電力供給に向けたコーポレートPPAの検討が増えています。

需要家の多様な属性ニーズを満たすコーポレートPPA

市場環境の変化に伴い、需要家の間で、グリーン電力調達手法のコーポレートPPA導入が検討されています。電力価格の安定性を求める需要家も増え、低コストよりも環境への貢献を重視する企業もあります。

多様化する供給事業者と手法

供給事業者と供給方法の多様化が進んでいます。電力自由化により、さまざまな事業者が小売事業に参入しています。オフサイトPPAやバーチャルPPAなどの手法も増えており、今後は法規制や会計処理の整備により、さらなる多様化が期待されます。

しかしながら、コーポレートPPAの締結に向けた取組みは必ずしも進んでおらず、未だに需給双方で課題を抱えています。

需要家側の課題
需要家、とりわけ電力需要の多い製造業の需要家にとっての課題は電力コストの増加です。コーポレートPPAのコストは電力市場と非化石価値の変動に左右され、グリーン電力価格の下落リスクのあるなかで、高価格で長期固定化される契約の踏み切りが難しいとされています。

供給事業者側の課題
発電事業者は、需要家を納得させる電力単価の提示に苦慮しています。また、短期・単年度の契約を主としてきた需要家にとって、長期契約の受け入れも困難であり、双方のニーズが合致しない状況が続いています。

さらなるコーポレートPPAの普及・拡大には、需給双方で未だ抱える課題の解決とあわせて、以下の論点に関して、企業が踏み込んだアプローチをする必要があります。

  1. 電源開発の多様化、再エネ容量の増加とコスト低減
  2. 事業者間のマッチングの円滑化
  3. 進展する制度整備に合わせた契約の標準化
  4. 需要家、発電事業者、アグリゲーター等の信用補完
  5. 需要家におけるESG・グリーン電力調達戦略の精緻化

執筆者

KPMGジャパン エネルギー パワー&ユーティリティーセクター統轄リーダー
KPMG FAS ストラテジーグループ 執行役員パートナー
鵜飼 成典

お問合せ

こちらは「KPMG Japan Insight Plus」会員限定コンテンツです。
会員の方は「ログインして閲覧する」ボタンよりコンテンツをご覧ください。
新規会員登録は「会員登録する」よりお手続きをお願いします。

競合他社の方は、登録をご遠慮させていただいております。