税務アップデート 

「税務アップデート」では、米国の税務に関する立法、司法、行政動向のうち、在米日系企業に影響が大きいと思われるものについて最新情報を提供しています。内容に関するご質問は、貴社担当パートナーまたは野本 誠・税務部門パートナー(Eメール:mnomoto@kpmg.com 電話:212 872 2190)までお問い合わせください。

 

2013年10月

 

2014年州事業税環境ランキング

タックス・ファウンデーションは、2014年版の州事業税環境ランキングを発表しました。これは、各州の税制の事業投資や運営に対するフレンドリーさを比較し、事業税環境を毎年格付けするものです。

 

このランキングは、各州の税制を法人税、個人所得税、売上・使用税、失業保険税、固定資産税の5つの側面から採点・順位付けしています。このうち法人税については、税率と課税ベースが評価基準となっており、一般的に税率が比較的低く単一税率が採用されており、広範な事業活動が課税対象となっている場合に高得点となります。一方、限界税率が高く、複雑な税率階層が設けられている場合等は、得点が低くなります。売上税については、一般的に州税分および地方税分を合わせた合算税率が低く、仕入原価や製造原価に対する免税が認められている場合に得点が高くなっています。

 

今年のランキングの上位10州は、ワイオミング、サウスダコタ、ネバダ、アラスカ、フロリダ、ワシントン、モンタナ、ニューハンプシャー、ユタ、インディアナとなっています。インディアナはテキサスを退けてベストテン入りを果たしており、上位10州中売上税と法人税のいずれも課税している州はユタとインディアナのみとなっています。

 

一方、下位10州は、メリーランド、コネチカット、ウィスコンシン、ノースカロライナ、バーモント、ロードアイランド、ミネソタ、カリフォルニア、ニュージャージー、ニューヨークとなっています。なお、ノースカロライナについては、最近成立した税法改正案が発効すれば、順位が17位程度まで上がるものと予想されています。

 

イリノイ州:州最高裁判所がクリック・スルー・ネクサス規定をインターネット・タックス・フリーダム法違反と認定

10月18日、イリノイ州最高裁判所は、同州のクリック・スルー・ネクサス規定は無効であり施行不可であるとの判決を下しました。この判決の多数意見によれば、同法は電子商取引に対する差別的な税を課すものであり、インターネット・タックス・フリーダム法(ITFA)に反するとの見解が示されています(Performance Marketing Ass'n, Inc. v. Hamer, Doc. No. 114496 (Ill. October 18, 2013))。

 

2011年3月、イリノイ州の使用税・サービス使用税法が改正され、特定の小売業者に対してクリック・スルー・ネクサス規定が適用されることになりました。これにより、コミッション等の対価を得てウェブサイト上のリンクを通じて顧客を紹介するイリノイ州内の業者と契約を結んでいる州外の小売業者は、当該契約に基づく売上が年間1万ドルを超える場合、「イリノイ州内に拠点を有する小売業者」の定義に含まれることになりました。イリノイ州のクリック・スルー・ネクサス規定は、他州のものと異なり、紹介業者との関係のみに基づき州内における事業活動が認定されることについて、州外の小売業者に反論の機会を与えていません。

 

2012年には、州地方裁判所が州内の紹介業者との関係は事業活動の認定には不十分であり、またイリノイ州のクリック・スルー・ネクサス規定は電子商取引に対する差別的な税を州政府が課すことを禁じたITFAに反するとの判決を下しています。

 

今回の州最高裁判所の判決は、州地方裁判所の判決を追認するものであり、州政府が連邦最高裁判所に上訴して受理されるか、ITFAが失効(現在の失効予定は2014年11月)しない限り、イリノイ州のクリック・スルー・ネクサス規定は無効となり、施行を継続できなくなります。

 

連邦租税裁判所:委託製造コストに国内生産特別控除を認めず

10月24日、連邦租税裁判所は、委託製造契約に基づき製品を生産している米国法人については国内生産特別控除規定(内国歳入法第199条)が適用されないとの初の判断を下しました(ADVO, Inc. v. Commissioner, 141 T.C. No. 9 (October 24, 2013))。

 

本件の納税者は、2005年から2007年にかけて米国内の顧客のためにダイレクト・メールの配布代行事業を営んでいましたが、配布する広告は顧客が作成する場合と、当該納税者が作成する場合があり、後者の場合には外部の印刷業者が実際の広告の印刷を代行していました。当該納税者は、広告の作成および配布から生じる売上は適格の国内生産売上にあたると主張しましたが、IRSは、広告の印刷が第三者の業者に委託されていることから、納税者が適格の生産活動を行っているとは認められないと反論していました。

 

今回の判決で連邦租税裁判所は、広告の所有に係わる便益や責任を納税者が有していないため、国内生産特別控除は適用されないとの判断を下しました。この判決では、製造プロセスやデザイン等における納税者のコントロールの有無よりも、納税者が印刷終了まで印刷物に関する法的所有権を有しておらず、損害リスクを負っていなかったことが重要視されています。

 

IRS LB&I部門:国内生産特別控除規定上の委託製造契約における便益と責任の認定についての内部通達を更新

10月29日、IRSの大規模事業者・国際(LB&I)部門は、第三者との委託製造契約のコストについて便益・負担テストに基づき国内生産特別控除が認められるか否かについての調査官向けの内部通達(LB&I Control No: LB&I- 04-1013-008 (October 29, 2013))を発表しました。これは、本年7月に発表された内部通達を更新するもので、納税者から次の文書を入手することを調査官に指示しています。

 

  • 調査対象の課税年度において納税者が製造物の所有により生じる便益と責任を有していたことを説明する文書。
  • 納税者が署名した宣誓書。
  • 委託製造業者が署名した宣誓書。

 

便益と責任に関する説明文書ならびに宣誓書は、資料請求から30日以内に調査官に提出しなければなりません。

 

この内部通達では、納税者が説明文書ならびに宣誓書を提出した場合には、委託製造契約に基づく適格活動により生産される適格製品の所有により生じる便益と責任を納税者が有していることを否認しないよう調査官に指示がなされています。

 

2013年9月

 

レビン上院議員がタックスヘイブン濫用防止法案を提出

9月19日、連邦議会上院のカール・レビン議員(民主党、ミシガン州選出)は、「チェック・ザ・ボックス」規定や支配下外国法人(CFC)に関する「ルック・スルー」規定を撤廃し、法人の海外取引を通じた租税回避策を防止する法案を提出しました。

 

同議員は、上院常設調査小委員会の委員長として、海外所得の課税問題に取り組んでおり、本年2月にも、タックスヘイブンの所得に関する「不公正な課税の抜け穴を防止する法案」を再提出しています。

 

今回提出された法案の骨子は、次の通りです。

 

  • 国外の子会社に移転した知的財産から発生する超過利益を課税することにより、租税回避を目的とした知的財産の国外移転を防止する。
  • 米国による税法の施行を妨害する国の銀行と米国の銀行との取引を禁止する等、租税回避を幇助する外国政府や金融機関に対抗するための強力な権限を財務省に与える。
  • 米証券取引委員会(SEC)登録企業に対し、国毎の雇用者数、収入、納税額の開示を義務づける。
  • 海外の事業活動からの所得への課税を繰り延べる一方で、これらの事業に関する費用を損金算入することを制限し、雇用や事業活動の国外流出を促す税制を廃止する。
  • 税務上、海外子会社の存在を無視する「チェック・ザ・ボックス」規定や、本来課税対象となるべき受動的所得を課税の繰延対象となる積極的事業所得として取り扱う「CFCルック・スルー」規定を撤廃する。
  • 実質的な海外所得の回収でありながら、海外子会社からの配当金課税を回避する目的で多国籍企業が海外子会社から短期借入を行うことを禁止する。

 

修繕費に関する最終規則ならびに有形資産の除却に関する規則草案を発表

9月13日、財務省およびIRSは、有形資産の取得、保守、改良に関する費用の資産計上の可否とタイミングに関するガイダンスを定めた最終財務省規則(T.D. 9636)ならびに有形資産の除却に関するルールを改定する規則草案(REG-110732-13)を発表しました。

 

最終規則は、原則として、2014年1月1日以降に開始する課税年度に適用されますが、一定の条件下に早期適用を選択することもできます。規則草案についても、最終化されれば、2014年1月1日以降に開始する課税年度に適用され、一定の条件下に早期適用の選択が認められる予定です。

 

多くの場合、これらの規則に準拠するためには、少なくとも1回の税務会計方針の変更が必要となるため、IRSは、税務会計方針変更の自動承認規定を含む移行ガイダンスを発表する予定です。なお、IRSの大規模事業者・国際(LB&I)部門による修繕費と資産の除却に関する税務調査凍結措置は2014年から適用されなくなるため、新規則への準拠をこれ以上引き伸ばすことはできなくなります。

 

今回発表された最終規則は、2011年の暫定規則を大枠で踏襲しており、多くの規定は変更されていませんが、以下の規定については大幅な改定がなされています。

 

  • 少額資産に関するセーフハーバー規定:適格財務諸表を作成している納税者の場合、会計上の資産計上基準が5,000ドル以下であれば、税務上も当該基準を適用して少額資産の取得費用を損金算入することができます(適格財務諸表を作成していない場合の基準は$500が上限)。
  • 会計上の改修費の資産計上基準の適用:会計上資産計上された改修費について、会計上の計上基準を税務上も適用することが選択できます。
  • 日常的保守費用に関するセーフハーバー規定:特定の適格な日常的保守活動は、設備の回復目的とは見なされません。
  • 災害損失ルールに関する部分的救済:災害に伴う交換費用のうち、被災した資産の税務上の簿価を超える部分については、資産計上の対象となる回復費用として取り扱う必要はありません。
  • 資産計上基準の改定:暫定規則の資産単位の定義は変更されていませんが、資産計上基準については一部改定・明確化されています。
  • 材料・消耗品:暫定規則と異なり、修理可能、一時的、もしくは緊急用の部品以外の材料や消耗品を資産計上して減価償却することは選択できません。材料・消耗品の定義は、取得もしくは生産コストが200ドル以下の資産となっています(暫定規則では100ドル以下)。

 

また、公告2012-73号で予告されていた通り、今回発表された規則草案においては、修正加速度償却制度(MACRS)の対象となる有形資産の除却に関する規定が大幅に改定されています。この規則草案によれば、資産の部分的除却を処理するために「一般的資産勘定」の取り扱いを選択する必要はなくなり、資産の一部分を除却する場合には、部分的除却を選択することにより、除却の度ごとに損益を認識することが可能となります。また、災害損失の認識は、部分的除却の選択の対象ではなく、必須となります。これらの資産の除却に関するルールの変更は影響が大きいことから、最終化に先立ち規則草案として発表されているため、暫定規則の除却ルールが当面継続適用されることになります。

 

含み損の「輸入」に関する規則草案を発表

9月6日、財務省とIRSは、非課税取引を通じた含み損の「輸入」に関する規則草案(REG-161948-05)を発表しました。

 

外国の親会社が米国子会社に含み損のある資産を非課税で現物出資した場合等、含み損の「輸入」があった場合には、資産を取得した米国法人の当該資産に対する税務上の簿価を時価に切り下げることが義務づけられていますが、従来、資産が「輸入」資産にあたるか否か、また含み損の輸入防止規定の適用基準や他の条項との関連性については、不明確な部分が多く存在していました。今回発表された規則草案では、輸入資産の定義や、含み損の輸入防止規定の適用基準を明確化するフレームワークが導入されています。

 

2013年8月

 

財務省:同性婚カップルの連邦税法上の取り扱いを発表

8月29日、財務省は、「1996年結婚防衛法(DOMA)」の主な条項を違憲認定した連邦最高裁判所の判決(United States v. Windsor)を受け、同性婚を認めている州の法律に基づき結婚した同性婚カップルを連邦税法上夫婦として認めることを発表しました。

 

これによれば、この取り扱いは、同性婚カップルが現在居住している州において同性婚が認められているか否かに拘わらず、所得税や贈与・相続税を含む全ての連邦税法上適用されます。また、申告身分、人的控除、扶養控除、標準控除、厚生福利、個人退職口座への拠出、勤労税額控除、子女税額控除等、婚姻関係に基づき取り扱いが決定されるすべての規定上、夫婦として認められることになります。

 

法的に結婚している同性婚カップルは、原則として、2013年度の連邦個人所得税申告書を「夫婦合算申告」もしくは「夫婦個別申告」のいずれかで提出することになります。また、時効が成立していない過去の課税年度については、修正申告を行うことができますが、強制ではありません。

 

同日、IRSは、同性婚者の連邦税法上の取り扱いに関する「よくある質問(FAQ)」を記載した通達(Rev. Rul. 2013-17)を発表しました。

 

含み損の輸入取引に関する財務省規則を最終化

8月30日、財務省およびIRSは、特定の非課税取引における資産ならびに株式の簿価の算定について規定した内国歳入法第362条(e)(2)に関する最終財務省規則を発表しました。この最終規則は、2006年の規則草案の内容を基本的に踏襲していますが、ルールの適用方法を簡素化するための改訂が含まれており、2013年9月4日以降に発生する取引に適用されます。

 

2004年米国雇用創出法により導入された内国歳入法第362条(e)では、非課税の現物出資取引を含む特定の非課税取引において、含み損のある資産が譲渡された場合、被譲渡人の当該資産の税務上の簿価は、譲渡人の簿価を引き継ぐのではなく、時価とすることが規定されています。

 

2006年10月の規則草案の発表後、納税者からの指摘により、規則草案の規定の一部に不明確な部分があることが判明したため、最終規則では以下を含む改訂がなされています。

 

  • 「米国の申告書」、「支配権を有する米国の株主」、「時価」等の用語の定義ならびに再定義。
  • 譲渡された資産の簿価の代わりに交付された株式の簿価を切り下げる選択を譲渡人と被譲渡人が共同で行う場合の手続を誰が何時行うべきかの明確化。
  • 確定債務ならびに偶発債務の引継ぎを伴う取引の取り扱いに関する例示の拡充。
  • パートナーシップやSコーポレーションが関与する取引の取り扱いの確認と明確化。

 

連邦会計検査院報告書:製造業者のイノベーションや研究開発に対する米国と外国の支援制度の比較

8月26日、連邦会計検査院(GAO)は、「グローバル製造業:米国と外国の政府プログラムの重要な相違点について」と題した報告書(GAO-13-365)を公表しました(2013年7月25日付、同8月26日一般公開)。この報告書は、諸外国の製造業支援プログラムを分析し、米国の税法改正を含む政策づくりの一助とすることを目的としたのものです。

 

GAOは、カナダ、ドイツ、日本、韓国の4カ国の制度を調査した結果、イノベーション、通商政策、人材開発の各分野で米国よりも幅広い支援策が製造業向けに実施されているとしています。この報告書によれば、イノベーションと研究開発の支援のための外国政府のプログラムは、製造業者のイノベーションを売上に繋げるための商品化支援により重点が置かれています。

 

テキサス州:事業税に関する改正規則を発表

テキサス州税務当局は、州事業税(フランチャイズ・タックス)法上の売上原価の控除に関する改正規則(Rule 3.588)を発表しました。テキサス州事業税は、テキサス州源泉の売上から売上原価(もしくは納税者の選択により人件費または売上の70%)を控除した粗利益を課税標準としています。今回の改正は、テキサス州事業税法上の売上原価の計算方法と、連邦税法上の棚卸資産の取り扱い規定との整合性を確保することを主眼としており、主な改正点は次の通りです。

 

  • 監督者の人件費等、特定の間接的人件費については、売上の4%の上限の対象とせず、全額の控除を認める。
  • 「サービス・コスト」の定義を改定し、商品の取得や製造に関連するサービスのコストについては、売上の4%の上限の対象とせず、全額の控除を認める。商品の取得や製造に関連しないサービス・コストについては、売上原価に算入することはできないが、4%の枠内で控除が認められる。
  • 連邦税法上損金算入が認められる特定の労働条件整備費用を「人件費」の定義から除外する規則を無効とした最近の州地方裁判所の判決を受け、教育費、事業目的での社用車の使用コスト、出張旅費、日当等、連邦税法上損金算入が認められる費用については、売上原価の一部として控除することを認める。
  • 粗利益の計算において売上原価に代えて人件費の控除を選択する手続を修正申告により行うことを認める方針を確認。
  • 建物や機械等に課せられた固定資産税は生産活動の直接的費用として控除することを認める。

 

オバマ大統領がコスキネン氏をIRS長官に指名

8月1日、オバマ大統領は、ジョン・コスキネン氏を次期IRS長官に指名すると発表しました。議会で承認が得られれば、本年9月で退任が決まっているワーフェル現長官の後任となります。

 

コスキネン氏は、ワシントンDC巡回区連邦控訴裁判所の書記官を経て弁護士として活動し、2000年から2003年までワシントンDC副市長、2004年から2008年まで米国サッカー連盟会長、2008年から2011年まで連邦住宅金融抵当公庫(フレディー・マック)の非常勤会長(2009年にはCEO代理)を歴任しています。

 

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