税務アップデート 

「税務アップデート」では、米国の税務に関する立法、司法、行政動向のうち、在米日系企業に影響が大きいと思われるものについて最新情報を提供しています。内容に関するご質問は、貴社担当パートナーまたは野本 誠・税務部門パートナー(Eメール:mnomoto@kpmg.com 電話:212 872 2190)までお問い合わせください。

 

2013年7月

 

連邦会計検査院報告書:法人の実効税率と法定税率について

7月1日、連邦会計検査院(GAO)は、米国の法人納税者の実効税率を分析し、法定税率と比較することを求めた連邦議会の要請に応じ、「法人税:実効税率の法定税率からの大幅な乖離について(GAO-13-520)」と題した報告書を発表しました。

 

実効税率は、経済的利益と納税額に基づき計算されるため、各種恩典等を反映した税法上の規定に基づき算出される課税所得と税額控除前の税負担額の比率である法定税率とは異なります。GAOの報告書では、会計上の税金費用と法人税申告書上の税額が比較されています。

 

この報告書によれば、情報が入手可能な直近年度である2010年にスケジュールM-3(大規模法人用の会計・税務調整表)を法人税申告書に添付している黒字の米国法人は、財務諸表上記載された全世界所得(当該法人税申告書に含まれている事業体の分のみ)の約13%を連邦法人税として納めています。外国税や州・地方税を勘案した場合には、黒字法人の実効税率は約17%となります。

 

ほとんど納税をしていない赤字法人を含めた場合には、実効税率を計算する場合の分母が減少することから、実効税率は上昇しますが、その場合でも全世界所得に基づく平均実効税率は22.7%に過ぎず、連邦法人税の最高法定税率である35%を大きく下回っています。

 

GAOの報告書は、収集可能なデータに基づく平均実効税率のみを分析しており、法人間での税率差は考慮していませんが、スケジュールM-3に記載された情報やGAOの以前の法人税に関する調査等によると、法人によって実効税率は大きく異なっていることが考えられるとしています。

 

ニューヨーク州:上訴裁がMTA雇用税を合憲判定

ニューヨーク州最高裁上訴部は、メトロポリタン地区通勤交通網税(MTA雇用税)の立法の経緯は、ニューヨーク州憲法の規定に反するものではないとして、下級審の違憲判定を覆す判断を示しました。下級審では、MTA雇用税を導入する法律は、州内の特定の自治体の財産、政策、自治権等に係わる「特別法」であり、ニューヨーク州憲法で求められている「ホーム・ルール・メッセージ(特別法によって影響を受ける自治体の議会の3分の2以上の賛成もしくは自治体の首長と議会の過半数の同意)」なしに立法化されたため、違憲であるとの判断が示されました。

 

MTA雇用税を導入する法律は、2009年、メトロポリタン地区交通局(MTA)の財政難に対応するため、ニューヨーク州議会により立法化されました。MTA雇用税は、「メトロポリタン通勤地区(MCTD)」内の雇用者と、自営業者のMCTD内で発生する所得を対象としていますが、MCTD内で影響を受ける郡や市がMTA雇用税の合憲性を問う訴訟を提起していました。

 

下級審では、MTA雇用税を導入する法案は、ニューヨーク州内の全ての郡ではなく、一部の特定の郡のみに適用されるため、「特別法」に該当し、州全体の重要な問題に係わるものでない限り、「ホーム・ルール・メッセージ」が必要であるとの判断が示されました。また、MTAの財政難はMCTD内の郡のみに影響するものであり、MTA雇用税はMCTD内でのみ課税されることから、州全体の重要な問題に係わるものとは認められないとして、州議会による立法が違憲であるとの判決が下されました。

 

今回の上訴審では、州全体の重要な問題の認定に関するニューヨーク州最高裁の過去の複数の判例に依拠し、下級審の違憲判断を覆す判決が下されました。この上訴審判決によれば、MTA雇用税を財源とするニューヨーク州の公共交通網は、①地域ならびに州の経済に直接的な便益を与えている、②州全体の経済的活動を促進している、③ニューヨーク市のみならず、果てはバッファロー、アルバニー、プラッツバーグに至るまで広範囲において雇用を創出していること等から、MTA雇用税は州全体の重要な問題に係わるものであり、特別法の立法に際して「ホーム・ルール・メッセージ」を必要とする規定への例外が適用されると結論づけています。

 

連邦控訴裁:非居住外国人のギャンブル所得を「セッション毎」に認定

7月9日、コロンビア特別区連邦控訴裁判所は、米国内でのギャンブルの賞金(および損失)を「セッション毎」に計算することを認める判断を示し、租税裁判所の判決を破棄した上で差し戻しました(Park v. Commissioner, No. 12-1058 (D.C. Cir. July 9, 2013))。

 

従来、IRSは、本件の原告である韓国人の場合のように、非居住外国人であるギャンブラーが稼得した賞金を米国市民であるギャンブラーとは異なる方法で課税してきました。米国市民の場合には、ギャンブルの「1セッション」毎に賞金と損失の相殺が認められていますが、非居住外国人の場合には、1回の「賭け」毎に賞金と損失が認定されるため、実質的に賞金と損失の相殺が認められなくなります。

 

本件の原告は、スロットマシンで得た13万4千ドルの賞金に対する課税を受け、セッション毎に賞金と損失の相殺が認められるべきであると主張していましたが、下級審では認められませんでした。

 

控訴審では、非居住外国人の所得に対する課税について規定した条文(内国歳入法第871条)にある「利益(gains)」には、スロットマシンでの1回づつの賭けから生じる賞金が含まれるとIRSが解釈しているのに対し、米国居住者によるセッション毎の損益通算の根拠となっている条文(内国歳入法第165条(d))にも同じ「利益」という表現が使われ、「ギャンブル行為から生じた損失は、当該行為から生じた利益の範囲においてのみ損金算入が認められる」と規定されていることから、同じ「利益」という用語定義されているギャンブル所得を米国市民か非居住外国人かによって異なる方法で課税するのは合理性を欠くとの判断が示されています。

 

2013年6月

 

連邦議会上院財政委員会:税制改革論議は優遇税制ゼロからスタート

6月27日、連邦議会上院財政委員会の正副委員長は、「特定の業種等を優遇する益金不算入、損金算入、税額控除制度等、いわゆる『減税政策』と呼ばれるすべての特別措置」を一旦排除し、「白紙」の状態から税制改革の論議をスタートさせる方針を明らかにしました。

 

同委員会が発表した公開書簡によれば、バーカス委員長(民主党、モンタナ州選出)ならびにハッチ副委員長(共和党、ユタ州選出)は、各委員に対し、「税制改革後も存続させるべき減税政策や、税制改革において追加、撤廃、改正すべき税法の条項」があれば、7月26日までに提出する様に呼びかけています。

 

なお、この書簡では、税制改革後も存続させる減税政策について、次の基本方針が示されています。

 

「我々は、現行の減税政策のうち、いくつかのものについては、何らかの形で存続させることが望ましいと考えているが、現在の税法においては、特別な利権のための優遇税制が乱立していることも確かである。我々は、すべての特別措置について、①経済成長に寄与していること、②税の公平化に貢献していること、③その他の重要な政策目標を効果的に後押ししていること、のいずれかに明らかに該当していない限り、撤廃を前提とする方針で臨む計画である。」

 

また、この書簡によれば、正副委員長は、白紙からのスタートでも税の累進性は確保することが可能であるが、税率の引き下げや財政赤字削減のための税収確保に関する議論は当面保留するとしています。

 

この書簡に含まれている両院租税委員会作成の資料によれば、個人所得税の場合、一切の優遇税制を排除した白紙の状態に2兆ドルの減税政策を加えるごとに、7つの税率区分すべてにおいて平均で1.3%から2.2%の税率引き上げが必要となります。法人税の場合も、2,000億ドルの減税政策を加えるごとに、最高税率の引き上げが平均で1.5%必要となります。

 

租税裁判所:IRSによるAPAの破棄に対する裁判所の管轄権について

6月26日、連邦租税裁判所は、IRSによる移転価格に関する事前確認(APA)の破棄に関する裁判所の管轄権について判断を示しました(Eaton Corp. v. Commissioner, 140 T.C. No. 18 (June 26, 2013))。

 

本件の当事者である納税者は、子会社との特定の取引に関する移転価格算定方式について、IRSと2件のAPAを締結していましたが、IRSは、納税者が契約要件に違反したとしてAPAを破棄した上、APAで指定されたものとは異なる移転価格算定方式を適用し、2005年と2006年にそれぞれ1億200万ドルと2億6,600万ドルの所得の更正を行いました。

 

納税者は、データのエラーについては2010年に自主的に開示して訂正しており、APAの契約要件には違反していないとして、租税裁判所に訴えを起こしました。その後、納税者、IRSともに裁判所に部分的略式判決を求め、納税者側がAPAは法的拘束力を持つ私的契約であり、IRSはAPAの破棄の契約法上の正当性を証明しなければならないと主張したのに対し、IRSは、一定の裁量権をIRSに認めた手続細則に基づきAPAは破棄されており、租税裁判所が追徴の正当性を評価するために裁量権の濫用の有無を判定する管轄権を有する行政決定であると反論していました。

 

租税裁判所は、IRSの主張を認め、APAの破棄は追徴の可否を左右する行政決定であり、租税裁判所の管轄下にあるとの判断を下しました。また、IRSによる裁量権の濫用の有無を判定するため、納税者は、IRSが恣意的、専横的、あるいは正当な根拠なくAPAを破棄したことを証明しなければならないとしています。

 

マサチューセッツ州:経済実体論に基づき事業活動の存在を否認

マサチューセッツ州不服審判委員会は、米国法人の親会社であるカナダ法人が従業員や機能の一部を移管したことにより、同州内で事業活動を行っていると見なされるか否かについて審判を下しました。

 

このカナダ法人は、マサチューセッツ州内の特定の子会社の従業員を自社に移籍させ、関連会社から賃借した州内の事務所スペースでこれらの従業員を就労させていました。これにより、当該カナダ法人は、マサチューセッツ州内で事業活動を行っているとして、関連会社グループの合算申告に含まれることになりました。

 

この事業活動の認定について、マサチューセッツ州税務当局は、カナダ法人の多額の欠損金を利用することのみを目的としたものであると主張しましたが、納税者は、従業員や機能の移管は正当な事業上の目的に沿ったものであり、租税回避以外の経済的効果を伴うものであると反論していました。

 

州不服審判委員会は、納税者の従業員の証言を含む様々な証拠を検討した結果、州内での事業活動を確立するための一連の取引には、租税回避以外の目的は見当たらず、経済実体論に基づき無視されるべきであるとの判断を下しました。この判断にあたっては、事業再編の目的がマサチューセッツ州税の節減であり、全体の経営に影響がないように配慮すべきである等とした内部のやり取りやメモが決め手となりました。また、同委員会は、同社の税務、保険、内部監査等の機能の統一は以前に実施済みであり、従業員の移管による運営実態の変化は見られないと指摘しています。

 

IRS:スピンオフや法人組織再編取引等に関する個別通達の差し控え方針を改定

6月25日、IRSは、スピンオフ、法人組織再編、その他の法人税法上の非課税取引に関する個別通達の差し控え方針を改定する手続細則(Rev. Proc. 2013-32)を発表しました。

 

当該手続細則によれば、IRSは、これらの取引が原則として法人税法上非課税取引に該当するか否かについては、今後個別通達を発行しません。ただし、これらの取引に関連する重要な問題点が存在する場合には、今後も個別通達を発行します。

 

例えば、現物出資取引について、非課税の取り扱いを定めた内国歳入法第351条に関しては重要な問題点がない一方、当該取引に関連して出資者が受け取る株式の税務上の簿価について定めた内国歳入法第358条に関して重要な問題点がある場合には、後者についてのみ個別通達が発行されることになります。

 

2013年5月

 

両院租税委員会が下院政策委員会の税制改革分科会に改革案に関する報告書を提出

5月6日、連邦議会両院租税委員会は、下院政策委員会の税制改革分科会宛の現行法と税制改革案に関する報告書を発表しました。

 

2013年2月13日、下院政策委員会のキャンプ委員長とレビン副委員長は、11の税法改革分科会を設立しました。これらの分科会は、税制上の各分野の現行法を検証し、課題を研究するとともに、利害関係者、学者、シンクタンク、実務家、一般、他の下院議員等から意見を聴取する役目を担っています。

 

今回発表された両院租税委員会の報告書には、2013年現在の内国歳入法の規定の概観と各分科会が担当する分野の条項の詳細に加え、下院政策委員会のウェブサイトを通じて一般から寄せられたコメントや改革案が記載されています。また、キャンプ委員長とレビン副委員長の要請により、連邦議会の議員や委員会等が過去数年間に提出した税制改革案も記載されています。

 

IRS大規模事業者・国際部門:特定の企業買収における投資銀行手数料の取り扱いを税務調査の対象外に

IRSの大規模事業者・国際(LB&I)部門は、企業買収に伴い納税者が支払った投資銀行手数料のマイルストーン・ペイメントについて、一定の条件を満たす場合に更正を行わない旨を調査官に指示する内部通達を発表しました(LB&I-04-0413-002)。

 

IRSは、特定の企業買収取引における成功報酬の取り扱いについてセーフ・ハーバー規定を設けた手続細則2011-29号を2011年4月8日に発行しており、今回の内部通達では、支払いがあった課税年度の終了が同日の前後いずれであったかによって異なる適用条件が定められています。ただし、いずれの場合も、今回の内部通達の適用を受けるためには、少なくとも次の条件を満たす必要があります。

 

  •  成功報酬契約に伴う適格のマイルストーン・ペイメントのうち、その支払義務が確定した課税年度の申告書上における損金算入額が支払額の70%を超えていないこと。
  •  適格のマイルストーン・ペイメントの支払義務について争っていないこと。

 

IRSの閉庁スケジュールの申告、納税、資料提出要請への回答に対する影響

5月15日、IRSは、連邦政府予算の強制削減措置に伴う閉庁の影響に関する公告(IR-2013-51)を発表しました。現在、IRSは、5月24日、6月14日、7月5日、7月22日、8月30日に全米で閉庁することを予定していますが、予算面からの必要に応じて1~2日の閉庁日が追加される可能性があります。

 

これによれば、閉庁日には、IRSのすべての業務が停止され、申告書の受付処理や税務調査等は行われません。IRSでは、次の点について注意を呼びかけています。

 

  •  申告書の提出や納税は通常通り行うこと。
  •  申告や納税についてIRSと接触する必要がある場合には、閉庁スケジュールを予め考慮すること。
  •  閉庁日は祝日とは見なされないため、申告期日には影響はないこと。
  •  閉庁日には、電子申告の受領や受領確認はできないこと。
  •  納税期日は変更されないこと。
  •  一部のウェブサイトや電話による自動サービス機能は閉庁日も稼動するが、それ以外は稼動しないこと。

 

また、次の要請に対する回答の期限が閉庁日にあたる場合には、翌営業日まで期限が延長されます。

 

  •  行政召喚状
  •  税務調査等における資料請求
  •  徴税関連の資料請求

 

なお、他の省庁や裁判所に関する期限は延長されません。

 

行政管理予算局のコントローラーをIRS長官代行に指名

5月16日、オバマ大統領は、IRSによる保守系団体を標的とした審査問題でスティーブ・ミラー前長官代行が辞任したことを受け、行政管理予算局(OMB)の政府財務管理担当管理者(コントローラー)であるダニエル・ワーフェル氏をIRS長官代行に任命しました。同氏は、今会計年度末(2013年9月30日)まで長官代行の職を務めることになります。

 

医療機器物品税に関して事前合意制度の利用申請を受付

5月16日、IRSは、医療機器物品税に関する「よくある質問」をウェブサイト上で更新し、事前合意制度の利用の可否に関する質問と回答を記載しました。これによれば、特定の判断のための算定方法の妥当性を含む医療機器物品税に係わる問題点について事前合意制度の利用を申請することが認められることになります。同制度は、事実関係の認定や、特定の事実関係への確立された法解釈の適用について、IRSと納税者が申告に先立ち合意を締結するものです。

 

IRS:様式W-8BEN-Eの草案に関するコメントを募集

5月22日、IRSは、源泉税目的での受益者もしくは支払いの受取人としての居住ステータスの証明、ならびに外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)目的での外国金融機関における口座保有者もしくは支払いの受取人としてのステータスの証明のために各種事業体が使用する様式W-8BEN-Eの草案をウェブサイト上で発表しました。IRSでは、この草案に対するコメントを募集しています。

 

資産額1千万ドルから5千万ドルまでの法人およびパートナーシップによるスケジュールM-1の使用を容認

5月10日、IRSは、総資産額1千万ドルから5千万ドルまでの法人およびパートナーシップのスケジュールM-3(会計・税務調整表)の提出義務の変更を発表しました。これによれば、様式1120、 1120-C、 1120-F、 1120-S、1065、1065-Bを提出する法人またはパートナーシップは、2014年12月31日以降に終了する課税年度において、スケジュールM-3のパートIIおよびパートIIIの代わりにスケジュールM-1(簡易版の会計・税務調整表)を使用することが認められます。

 

*****

 

本文中の税務アドバイスは、弊社クライアントもしくはその他の個人や事業体が、①納税者に対して賦課される可能性があるペナルティーの回避を目的として使用することや、②調査対象事項について宣伝、マーケティング、推奨等を行うことを意図したものではなく、従ってこれらの目的には使用できません。

 

記事中の見解や意見は著者個人のものであり、必ずしもKPMG LLPのものではありません。また、記事中の情報は全て一般的なものであり、特定の個人もしくは事業体の状況への適用を意図したものではありません。