Tax Update 

「税務アップデート」では、米国の税務に関する立法、司法、行政動向のうち、在米日系企業に影響が大きいと思われるものについて最新情報を提供しています。内容に関するご質問は、貴社担当パートナーまたは野本 誠・税務部門パートナー(Eメール:mnomoto@kpmg.com 電話: 212 872 2190)までお問い合わせください。

 

20134

 

2014年度予算教書を発表

4月10日、オバマ政権は、2014会計年度(2013年10月1日開始)の予算教書を連邦議会に提出しました。この予算教書には、増減税なしの税制改革案ならびに向こう10年間で連邦政府の財政赤字を1.8兆ドル削減する計画が含まれています。

 

増減税なしの税制改革のフレームワークとして、政権は次の5つの基本方針を提案しています。

 

  • 税法上の抜け穴や特定業種の優遇を廃止し、課税ベースを拡大するとともに、法人税率を引き下げる。
  • 米国内の生産活動およびイノベーションを支援・強化する。
  • 国際課税を強化する。
  • 小規模事業者に対する課税を簡素化・軽減する。
  • 財政規律を回復し、財政赤字の拡大を一切許容しない。

 

事業者関連の税制改革については、次の具体的提案が含まれています。

 

  • 国外所得やエネルギー関連の課税ルールの変更と試験研究費税額控除制度の恒久化(従来の予算教書と同じ)。
  • 大手金融機関に対する「金融危機責任料」の賦課やパートナーシップのキャリード・イントレスト(投資ファンドのマネージャーに成功報酬として分配されるキャピタルゲイン)に対する課税ルールの変更による歳入増加(従来の予算教書と同じ)。
  • 小規模事業者による新規雇用や賃金引上げに対する10%の暫定的税額控除制度等の新たな奨励策の導入。
  • 時価評価制度等、金融派生商品に関する課税ルールの変更(連邦議会下院政策委員会の提案とほぼ同じ)。

 

ただし、今回発表された予算教書では、具体的な税率の引き下げ幅は言及されておらず、加速度償却制度の廃止、国外所得に対するミニマム税の賦課、法人による支払利息の損金算入制限、大規模パートナーシップ等への法人税課税等、過去の予算教書で提案されていた税率引き下げのための財源案も記載されていません。

 

また、1.8兆ドルの財政赤字削減計画のうち、1兆ドルは増税により賄うとしており、高額所得者に対する個人所得税の課税ルールを次の通り変更することにより5,800億ドルの歳入増を見込んでいます。

 

  • 年収100万ドル超の世帯に最低30%の所得税の納税を義務づける(いわゆる「バフェット・ルール」)。
  • 高額所得者による控除等の恩恵を28%に制限する。

 

テキサス州:連邦税法上損金算入される厚生福利費は人件費として控除可

テキサス州地方裁判所は、テキサス州事業税の計算上、連邦税法上損金算入が認められる特定の厚生福利費等は控除が認められるとの判決を下しました。テキサス州事業税の課税標準となる粗利益の計算上、課税対象となる事業体は、売上から仕入原価もしくは人件費のいずれかを選択して控除することができます。ここでいう人件費は、原則として、連邦税法上損金算入が認められるすべての給与ならびに厚生福利費を含むと定義されています。

 

しかしながら、テキサス州の施行規則では、社用車の提供等、従業員による業務遂行を可能とする労働環境を整えるための費用は「厚生福利費」には含まないことが規定されています。本件の原告である納税者は、この施行規則の条項は、連邦税法上損金算入が認められるすべての厚生福利費の控除を認めた税法の条文を不当に狭義解釈したものであると主張していました。裁判所は、納税者の主張に同意し、連邦税法上損金算入が認められている福利厚生費の控除を禁じた施行規則は無効であるとの判断を下しています。

 

外国人パートナーを有し非暦年課税年度を採用しているパートナーシップによる源泉徴収に関する公告

4月24日、IRSは、暦年2012年度と2013年度で個人所得税率が異なることを受け、2012年から2013年にかけての暦年以外の課税年度を採用しているパートナーシップは、個人である外国人パートナーに配賦する実質関連所得について暦年2012年度の税率を適用して源泉徴収を実施すべきとの公告(Announcement 2013-30)を発表しました。この公告は、暦年2012年中に開始するパートナーシップの課税年度に適用され、外国人パートナーに配賦される実質関連所得があるパートナーシップに次の手続を義務づけています。

 

  • 暦年2012年中に開始する課税年度については、2012年度版のパートナーシップ源泉徴収税申告書(様式8804)を提出すること。
  • 当該課税年度については、課税年度を通じて2012年度の税率に基づき源泉徴収を行うこと。

 

ただし、公告によれば、外国人パートナーは、パートナーシップから配賦される暦年2013年中に終了する課税年度の実質関連所得については、当該パートナー自身が所得を取り込む課税年度(すなわち2013年)の税率を適用しなければなりません。

 

ニューヨーク州:関連者へのロイヤリティーの損金算入否認ルールを変更する予算案が成立

関連者に支払うロイヤリティーの損金算入否認ルールを強化する条項を含む予算案がニューヨーク州議会において成立しました。これによれば、納税者は、ロイヤリティーの支払先の関連者と合算申告を行うか、次のいずれかの例外に該当しなければ、ロイヤリティーの損金算入を否認されます。

 

導管取引:①ロイヤリティーの支払先である関連者(以下「関連者」)がニューヨーク州、その他の州、あるいは外国でロイヤリティー収入に課税されていること、②関連者がロイヤリティーを第三者に支払っていること、かつ③正当な事業上の理由が存在すること。

 

課税済取引:①関連者がニューヨーク州あるいはその他の州で課税対象となっていること、②関連者の所得にロイヤリティーが含まれていること、かつ③当該所得に対する実効税率がニューヨーク州の法定実効税率の80%を下回っていないこと。

 

租税条約対象取引:①関連者が外国法人であること、②関連者の所得がその設立国と米国との間で締結されている包括的租税条約の適用対象であること、③関連者が当該国でロイヤリティーを含む所得に課税を受けていること、④関連者の所得に対する当該国の実効税率がニューヨーク州の実効税率と同等もしくはそれ以上であること、かつ⑤正当な事業上の理由が存在し、取引条件が独立第三者間基準に合致していること。

 

 

20133

 

2012年度APMAプログラム年次報告書を発表

3月25日、IRSは、2012年の第1四半期に旧事前確認(APA)プログラムと相互協議室との合併により発足した「事前確認および相互協議(APMA)プログラム」に関する暦年2012年度の年次報告書を発表しました。

 

処理件数等:

 

2012年

累計
(1991年~)

米国内

二国間

多国間

合計

申請件数

24

101

1

126

1,745

締結件数

新規

9

48

 

57

764

更新

28

55

 

83

391

審査中件数(年度末)

新規

36

173

0

209

N/A

更新

38

143

1

182

N/A

破棄件数

0

0

0

0

11

申請取下件数

2

4

0

6

180

 

平均審査期間(月):

 

新規

更新

全体

米国内

28.4 30.1 29.7

二国間・多国間

47.5 44.8 46.0

全体

44.5 39.8 41.7

 

2011年から2012年にかけて、申請件数は96件から126件と大幅に増加しましたが、締結件数も42件から単年度記録の140件へと飛躍的に増加したため、年度末での審査中件数は445件から391に減少しました。2012年は、プログラム史上、締結件数(140件)が申請件数(126件)を初めて上回った年となります。年次報告書によれば、締結実績の向上は、経験豊富なエコノミストを含むスタッフ増員の成果であるとしています。

 

2012年中に締結された二国間APAのうち、53パーセントが日本との間のものとなっており、2位のカナダ(16%)、3位の英国(10%)を大きく引き離しています。

 

キャンプ下院政策委員長が小規模事業者に関する税制改革案を発表

3月12日、連邦議会下院のキャンプ政策委員長(共和党、ミシガン州選出)は、小規模事業者に関する税制改革案を発表しました。

 

この案には、Sコーポレーション(法的形態は法人であるが、税務上は一定の要件下に構成員課税を選択することが認められる小規模事業者向けの優遇制度)ならびにパートナーシップの取り扱いに関する改革の選択肢が含まれています。これによれば、一つの選択肢は、Sコーポレーションおよびパートナーシップに関するルールを簡素化した上で継続しつつ緩和措置を講じるもので、もう一つの選択肢は、Sコーポレーションとパートナーシップに関する構成員課税制度を一本化するというものです。

 

また、この税制改革案では、構成員課税制度以外の部分でも、次の提案がなされています。

 

  • 内国歳入法第179条に基づく少額資産の損金算入制限(25万ドル)ならびに逓減開始金額(80万ドル)を恒久化する(インフレ調整あり)。
  • 小規模事業者による現金主義の適用に関するルールを簡素化・緩和する。
  • 開業準備費用および創業費の取り扱いルールを一本化し、損金算入枠を拡大する。
  • 申告期日をパートナーシップは3月15日、Sコーポレーションは3月31日、Cコーポレーション(通常法人)は4月15日とし、それぞれ6ヶ月の延長を認める。

 

政策委員会では、この改革案が特定の税法上のテクニカルな問題点および政策上の課題について解決策となるものではないことを認めた上で、一般からのコメントを募集しています。

 

この改革案は、同委員会が過去16ヶ月の間に発表した包括的税制改革に関する提案の第3弾となります。キャンプ政策委員長は、今年度中の税制改革の立法化を目指すとしており、同委員長と民主党のレビン議員(ミシガン州選出)は、委員会のメンバーから成る11の部会を設立し、税制改革を様々な側面から検討すると発表しています。

 

上院財政委員会が税制改革の選択肢に関する報告書を発表

3月21日、連邦議会上院財政委員会は、税制改革の目的と選択肢に関する9ページの報告書を発表しました。これは、バーカス委員長(民主党、モンタナ州選出)やハッチ委員(共和党、ユタ州選出)等が必ずしも支持しているものではないとしていますが、徴税・施行、申告手続、簡素化等について達成すべき目標を挙げています。例えば、簡素化については、人的控除の逓減、項目別控除の制限枠、個人ならびに法人の代替ミニマム税等、複数回の税額計算を義務づける条項は撤廃するとしています。

 

*外国の年金基金の米国不動産権益譲渡益をFIRPTAの対象外とする提案

3月29日、オバマ政権は、米国内のインフラ投資促進に関する提案を発表しました。この提案には、外国(法)人不動産投資税法(通称FIRPTA)を改正し、外国の年金基金が認識する米国不動産権益の譲渡益を課税対象外とする案が含まれています。

 

これによれば、長期的かつ予見可能性や安定性の高いキャッシュフローが見込めるインフラ投資は年金基金等にとって魅力的な投資対象である筈ですが、大規模な年金基金をはじめとする外国人投資家は、FIRPTAによる課税を嫌い、米国内のインフラや不動産への投資を敬遠する傾向があります。オバマ政権は、米国内の年金基金が稼得する米国不動産の譲渡益は一般的に非課税となっていることから、外国の年金基金による米国不動産権益の譲渡益に対するFIRPTA課税を免除することにより、両者の取り扱いを平等化すべきであるとしています。

 

 

20132

 

レビン上院議員が「抜け穴防止」法案を再提出

2月12日、連邦議会上院のカール・レビン議員(民主党・ミシガン州選出)は、タックス・ヘイブンの利用、タックス・シェルターの販売、ストック・オプション費用の損金算入等に関する条項を含む「不正な税法上の抜け穴防止法案(上院法案第268号)」を再提出しました。また、この法案には、パートナーシップ投資に関するいわゆる「キャリード・イントレスト(投資ファンドのファンド・マネージャー等が成功報酬として受け取る譲渡益の持分であり、個人所得税法上はキャピタルゲインの低い税率で課税されるが、実質的には役務の提供対価であるため、通常の所得として課税すべきとの主張がある)」の取り扱いを変更する条項も含まれています。レビン議員は、海外所得に関する税制を専門とする上院恒久調査小委員会の委員長を務めています。

 

同議員は、「法定税率が35%であるのに、今日の企業の平均税率が12%に過ぎないのは何故か?それは税法の抜け穴を駆使しているためだ」と法案の再提出にあたっての本会議での演説で述べています。

 

「2013年市場公正化法」を連邦議会に提出

2月14日、連邦議会上下両院において、州内に拠点を持たず通信販売や電子商取引を行う小売業者(リモート・セラー)の州内の顧客に対する売上について、売上・使用税の徴収義務を課す権限を州政府に与える法案(下院法案第684号ならびに上院法案第336号)が提出されました。この法案は、「2013年市場公正化法」と名付けられ、上下両院の超党派の議員団により提出されています。この法案が可決された場合には、州外のリモート・セラーに売上税徴収義務を課す権限が「簡素化売上・使用税協定(SSUTA)」に加盟している州政府に与えられることになります。

 

また、この法案では、SSUTAに加盟していない州についても、売上・使用税に関する一定の簡素化措置が実施されている場合には、同様の権限が認められます。例えば、当該権限の行使を希望する州は、地方自治体分を含むすべての売上・使用税の施行、徴収、調査を一つの行政機関に集約するとともに、州レベルと地方自治体レベルで申告書式および課税標準を統一しなければなりません。また、リモート・セラーが商品への課税の有無や税率を確認できる様に情報とソフトウェアを整備し、リモート・セラーによる申告事務を代行する適格業者を公認する必要があります。州によって提供された情報の誤りに起因する徴収漏れ等のエラーについては、リモート・セラーや適格代行業者が責任を問われないことが保証されなければなりません。

 

州間取引の売上は、配送先の州が源泉地となります。SSUTAのルール上では発送元が源泉地となる州内取引の売上については、当該法案の条項は適用されません。また、通信販売や電子商取引等による米国内での売上が年間100万ドル以下の小規模事業者については、売上税の徴収や納付を強制することはできないとされています。

 

内国歳入法第1446条に基づくパートナーシップの源泉徴収税率を変更

2012年米国納税者救済法により、2013年1月1日以降、個人所得税法上の通常所得に対する最高税率が39.6%に、キャピタル・ゲインに対する最高税率が20%に引き上げられたことにより、米国もしくは外国で設立されたパートナーシップが稼得する米国実質関連所得の外国人パートナー持分に対する内国歳入法第1446条に基づく源泉徴収税率が変更されました。

 

これを受けて、IRSは、源泉徴収税率を改訂した2013年版の様式8804-W(パートナーシップによる内国歳入法第1446条に基づく源泉徴収税額の分割納付票)および記入要綱を発表しました。

 

IRSが適用連邦利率(AFR)の決定方法の変更を提案

2月5日、IRSは、次の内容の公告を発表しました(Notice 2013-4)。

 

  • 財務省およびIRSが現在使用している内国歳入法第1288条(b)に基づく調整後適用連邦利率ならびに同382条(f)(2)に基づく調整後連邦長期利率の決定方法を改定する。
  • これらの利率の決定方法のうち変更すべき点について一般からの意見を募集する。
  • 新たな決定方法が確定するまでの期間における現行の決定方法の修正に関するガイダンスを与える。

 

この公告によれば、財務省およびIRSは、これらの利率の決定方法が①市場環境や税率の変更に左右されず、常に根拠条文の趣旨に沿ったものであること、②簡単に入手可能なデータに基づくものであること、を担保する形で決定方法を変更したいとしています。

 

デラウェア州:新自主開示プログラムの供出期限を延長する法案

デラウェア州の未請求資産に関する新自主開示プログラムに基づく供出期限を延長するデラウェア州下院法案第2号が可決され、知事による署名待ちとなっています。デラウェア州州務長官により期限付で実施されている新たな自主開示プログラムにおいては、2013年6月30日までに参加を申請し、2014年6月30日までに未請求資産の供出を完了(もしくは供出計画を確定)すれば、調査の遡及期間が1996までに限定されますが、この法案は2014年6月30日の供出期限を2015年6月30日まで延長するものです。

 

なお、デラウェア州では、従来より、未請求資産局による自主開示プログラムが実施されていましたが、これに参加を申請すると調査の対象となった場合と同様の厳しい取り扱いがなされる傾向があり、不評となっていました。この法案では、2012年6月30日以前に未請求資産局と自主開示プログラムに基づく合意を締結している会社の場合でも、当該合意でカバーされていないあらゆる資産の種類、期間、事業体、関連者について、新プログラムを利用することが認められています。

 

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