M&A プレディクター 2013年1月 

自信を回復しつつある世界のM&A市場

直近のアナリスト予測によれば、世界規模で大企業によるM&Aによる自信の回復がみられ、グローバル ベースの予想PER(当調査ではM&Aを行う意欲を測定する指標として利用)は過去6ヶ月間で15%上昇、前年同期比では12%の上昇を示しています。

 

こうしたM&A意欲の改善に加えて、純負債のEBITDAに対する割合予測値も今後1年間で15%の改善が見込まれ、資金調達能力も向上してきていると見られます。

 

資金調達能力とM&A意欲の両方が同時に増加するのは、この2年間で初めてで、明るい兆候です。

 

KPMG M&A プレディクター

弊社のM&A プレディクターとは、お客様向けにM&A関連の世界的動向予測をまとめたものです。2007年創刊以来、12ヶ月先までの重要指標を追跡・予測することにより、M&A意欲と資金調達能力を評価しています。予想PERの動きは全体的な市場のM&A意欲に関する良い指標となり、純負債/EBITDA(利息、税金、償却前利益)比率は企業の将来の買収資金調達能力を測定する際に有用です。

 

本プレディクターは、世界中の企業を業種および地域に基づいて分類し、時価総額上位1,000社のデータを用い、年間2度発行されています。

 

図1

 

*金融サービス業および不動産業の分析においては純負債/EBITDA比率は有用でないため、これらの業種は当分析の対象外です。データ出典はS&P Capital IQ。また可能な限り、損益およびEBITDAは特別項目計上前の金額を使用(ただし日本はGAAPベースの金額)。

 

 

「企業はついに緊縮財政という制約を乗り越え、新たな機会を模索しようとしている」

 

 

資金調達能力とM&A意欲が、ともに改善

過去2年間の傾向として、企業の債務削減努力により資金調達能力が着実に改善する一方、M&A意欲は低下の一途をたどってきました。

 

ところが、この6ヶ月間でその傾向に歯止めがかかり、資金調達能力と同様にM&A意欲の面にも改善が見られるようになりました。2012年6月との比較において、その違いは明らかになっています。前刊のアナリスト予測では、M&A意欲は全体的に減退すると見られていたものの、昨年末には調査対象ほぼすべての国において意欲が上昇しています。

 

弊社コーポレート・ファイナンス部門グローバル・ヘッドを務めるトム・フランクスは、「この数値は市場が転換点に達したことを示している。企業買収意欲に大きな変化が見られ、企業はついに緊縮財政という制約を乗り越え、新たな機会を模索しようとしている。」と述べています。

 

全業種でM&A意欲が上昇

マクロ経済全体が一定の安定を取り戻しつつある中、一部業種においては今後12ヶ月間、特に好調な数値が予想されています。

 

ヘルスケア部門では過去6ヶ月の間、M&A意欲の上昇が11%にとどまったのに対し、今後1年間の資金調達能力の改善予想は40%と、大幅な向上が予測されています。テクノロジー部門も同様の動きで、M&A意欲9%の上昇(順調な上昇ではあるものの平均値以下)に対し、資金調達能力の改善予想は32%。工業部門ではM&A意欲22%上昇に対し、資金調達能力は16%改善。素材部門も好調で、資金調達能力は16%、意欲は37%と、ともに上向いています。

 

欧州企業、好見通し

ユーロ圏での諸問題をよそに、欧州企業はとりわけ強気の姿勢を見せており、予想PER(意欲の指標)は2012年6月時点で19%上昇、過去12ヶ月で16%の上昇を示しています。

 

欧州の純負債/EBITDA比率予測も同様にポジティブな数値を示しており、企業が有利な金利環境を活かした負債返済を進めていることから、資金調達能力の向こう12ヶ月の改善は12%となっています。

 

国別で見た場合、当然のことながら大きな相違があるものの、M&A意欲と資金調達能力の全般的な数値傾向は、いずれも圧倒的にポジティブです。代表例にドイツが挙げられ、2012年6月からの意欲上昇が26%に対し、資金調達能力の改善予想は20%です。同様に米国は意欲が10%、資金調達能力が21%の改善。ブラジルでは意欲23%上昇に対して、資金調達能力の改善はわずかですが3%。景気二番底後の英国でさえ、意欲は世界平均値に近い15%増という好調な数値を示しており、資金調達能力の予想も11%改善となっています。

 

図2

 

トム・フランクスは企業買収意欲と資金調達能力の両方の改善は、マクロ経済環境が世界的に安定してきている兆候であるとの見解を示しています。米国では選挙が終わり、「財政の壁」問題は回避され、中国は新政権への移行を開始しました。また「6ヶ月前に比べ、より確実性が増したことが、M&A意欲と資金調達能力に徐々に浸透してきている。」とも述べています。

 

経済動向への大きな影響力を持つ中国では、2012年7月からM&A意欲が17%上昇し、資金調達能力の予想は12%の改善を示しています。驚くべきことに、インドの資金調達能力は130%の改善が見込まれていますが、M&A意欲の上昇はわずか9%でした。

 

買収案件数低下、価格は底入れ

2012年に完了した買収案件は年末に向けて価格が底入れしたことから、買収意欲の上昇が伺えます。

 

M&A取引に関する統計は完了案件データである一方、PERと純負債/EBITDA比率は予測値を用るため、意欲ならびに資金調達能力と完了案件金額との間にギャップが生じている場合も考えられます。

 

全般的に、2013年の見通しは過去2年間に比べてよりポジティブなものになることを示しています。世界的景気低迷は回復に向かいつつあり、複数の主要市場は安定してきています。長く続いた不況を経て、ようやく企業のM&A実行能力に見合う意欲が戻ってきたようです。

 

図3