税務アップデート 

「税務アップデート」では、米国の税務に関する立法、司法、行政動向のうち、在米日系企業に影響が大きいと思われるものについて最新情報を提供しています。内容に関するご質問は、貴社担当パートナーまたは野本 誠・税務部門パートナー(Eメール: mnomoto@kpmg.com 電話: 212 872 2190)までお問い合わせください。

 

2013年1月

 

「2012年米国納税者救済法」成立により「財政の崖」を回避

1月2日、オバマ大統領の署名により、「財政の崖」を回避する「2012年米国納税者救済法」が成立しました。同法の骨子は、次の通りです。

 

  • 夫婦合算申告者で45万ドル、独身者で40万ドルを超える高額所得者を除き、2001年と2003年に実施された個人所得税率の引き下げを恒久化する。
  • 独身者で25万ドル、夫婦合算申告者で30万ドルを超える高額所得者の人的控除と項目別控除の逓減制度を復活。
  • 夫婦合算申告者で45万ドル、独身者で40万ドルを超える高額所得者のキャピタル・ゲインおよび配当所得に対する税率を15%から20%に引き上げ。
  • 代替ミニマム税の免税枠のインフレ調整による救済措置を恒久化。
  • 遺産税、贈与税、隔世譲渡税の免税枠5百万ドル(インフレ調整あり)、最高税率40%を恒久化。
  • 50%ボーナス減価償却制度ならびに少額資産の損金算入に関する緩和措置を1年延長。
  • 時限立法による各種特別措置を2013年末まで延長。試験研究費税額控除制度、能動的金融所得に関するサブパートF規定上の例外措置、支配下外国法人である関連者間取引に関するルック・スルー・ルール等、2011年末で失効していたものについては、2012年1月1日に遡って復活。

 

また、同法には、次の条項も含まれています。

 

  • 連邦政府支出の一律強制削減措置の発動を2013年3月まで延期。
  • 緊急連邦失業保険制度を1年間延長。
  • メディケア診療報酬削減凍結(Doc Fix)を2013年末まで延長 。

 

なお、過去2年間実施されてきた2%の雇用税減税措置は延長されませんでした。

 

日米租税条約改定議定書に署名

1月24日、日米租税条約を改定する議定書が日米両国の政府代表者により署名されました。主な改定点は、次の通りです。

 

  • 利息に対する源泉税を免除。
  • 配当に対する源泉税の免税要件を緩和(株式持分要件を「50%超」から「50%以上」に、保有期間を「12ヶ月」から「6ヶ月」に)。
  • 外国(法)人不動産投資税法(FIRPTA)の5年間の遡及テスト規定の回避を防ぐことにより同法の規定を日本の居住者に全面適用すると同時に、日本の不動産に係る不動産化体株式の譲渡所得について、その株式の発行法人が日本の居住者でない場合においても、日本に課税権を付与。
  • 一定期間を経ても日米両国政府間で解決できない事案について仲裁手続を導入。
  • 権限ある当局による徴収共助条項の適用対象を拡大。
  • 情報交換規定の改定。

 

改定議定書は、両国においてそれぞれの国内手続を経た後、両国間で批准書を交換した日に効力を生じ、次の通り適用されます。

 

  • 源泉徴収される租税 :議定書が効力を生ずる日の3ヵ月後の日の属する月の初日以後に支払われ、又は貸記される額 。
  • その他の租税 :議定書が効力を生ずる年の翌年の1月1日以後に開始する各課税年度。
  • 相互協議条項および情報交換条項については特別規定による。

 

FATCA財務省規則を最終化

1月17日、財務省およびIRSは、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)に関する最終財務省規則を発表しました。2010年3月のFATCA立法化以来、財務省とIRSは、規則草案を含む各種ガイダンスを発表してきましたが、2014年1月1日のFATCAに基づく源泉徴収および報告手続の開始を控え、可能な限り事務負担を軽減し、現地法との軋轢に配慮した形で規則が最終化されました。

 

最終規則には、次の各項目に関する規定が含まれています。

 

  • 政府間合意との整合性
  • 特定の文書化規定およびデューデリジェンス規定の緩和
  • 経過措置の適用対象の拡大
  • 特定の退職年金および預金口座に関する規定の緩和
  • 限定的外国金融機関に関する移管ルール
  • 持参人払式証券の取り扱い
  • ブローカーの取り扱い
  • 登録手続

 

署名権限のみを持つ特定個人の国外銀行口座報告の期日を再延長

財務省の金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)は、特定の個人による外国銀行・金融口座報告書(様式TD F 90-22.1)の提出期日を2014年6月30日まで再延長する通達を発表しました。この対象になるのは、米国の上場企業や金融機関を含む特定の規制対象企業の従業員および役員で、口座の署名権のみを有し、経済的権利は有さない者です。これに先立ち、財務省は、2012年2月、これらの個人による同様式の提出期日を2013年6月30日まで延長していました。

 

キャンプ下院政策委員長が金融商品に関する税法改正を提案

1月24日、連邦議会下院政策委員会のデービッド・キャンプ委員長(共和党、ミシガン州選出)は、金融商品に関する税法改正案を発表しました。その骨子は、次の通りです。

 

  • 事業目的でのヘッジを除く特定のデリバティブおよびストラドルについて毎年時価評価を義務づけ、発生する損益を通常損益として取り扱う。
  • 識別ルールをはじめとする事業目的のヘッジに関するルールを簡素化する。
  • 債務要件の重要な変更に伴う見なし債務免除益の認識の回避を可能とする。
  • 債券の償還差損を売却・償還時の一括認識から満期時までの償却による認識に変更する。
  • 売却損益のより正確な算定のため、類似性の高い有価証券の簿価を平均取得価格に基づき決定する。
  • 入替取引に関するルールの適用対象を特定の関連者取引に拡大する。

 

 

201212

 

医療機器物品税に関する最終財務省規則を発表

12月5日、財務省ならびにIRSは、2013年1月1日付で施行開始される特定の医療機器の販売に対する2.3%の物品税に関する最終財務省規則を発表しました(T.D. 9604)。この物品税は、オバマ大統領の医療保険改革の財源確保を目的として、患者保護・医療費負担軽減法(Patient Protection and Affordable Care Act )とそれを修正する医療・教育調整法(Health Care and Education Reconciliation Act)の一部として立法化されたものです。

 

今回発表された最終財務省規則は、2012年2月に発表された規則草案に対して一般から寄せられた書面によるコメントや、2012年5月16日に開催された公聴会での証言を考慮し、規則草案に若干の修正を加えたものです。

 

また、同日、IRSは、医療機器物品税に関する「よくある質問(FAQ)」をホームページに掲載するとともに、課税標準となる販売価格の算定方法を含む医療機器物品税の施行上の各種問題点に関する中間ガイドラインを示した公告(Notice 2012-77)を発表し、最終規則で保留されている各項目についてのコメントを募集しています。

 

第9巡回区連邦控訴裁判所:代替ミニマム税欠損金の「繰り戻し」を「繰り越し」と認めず

12月19日、第9巡回区連邦控訴裁判所は、2001年度と2002年度について適用される特別規定を適用し、2004年に発生した代替ミニマム税計算上の欠損金を2002年に繰り戻すことにより、代替ミニマム税計算上の課税所得を100%相殺することは認められないとの連邦租税裁判所の判断を支持する判決を下しました(Metro One Telecommunications, Inc. v. Commissioner, No. 11-70819 (9th Cir. December 19, 2012))。

 

代替ミニマム税計算上、欠損金は、原則として、2年の繰り戻しと20年の繰り越しが認められますが、課税所得の90%までしか相殺することができません。しかしながら、2001年9月11日の同時多発テロ後の経済刺激策の一環として、2001年もしくは2002年中に終了する課税年度に発生した代替ミニマム税計算上の欠損金については、通常の2年ではなく、特別に5年の繰り戻しを認める法律が連邦議会により立法化されました。さらに、この法律では、代替ミニマム税の計算上、2001年もしくは2002年に発生した欠損金を繰り戻す場合や、欠損金を2001年もしくは2002年に繰り越す(「キャリー・オーバー」)場合には、代替ミニマム税計算上の所得の100%を相殺することが認められていました。

 

本件における納税者は、2004年に発生した代替ミニマム税計算上の欠損金を2002年に繰り戻し、2002年の代替ミニマム税計算上の課税所得を100%相殺しようとしましたが、IRSは、2002年においては課税所得の90%しか相殺は認められないとして、2004年からの繰り戻し額を減額し、2002年の代替ミニマム税を追徴しました。

 

連邦租税裁判所での審理において、納税者は、後の課税年度への繰り越しを意味する正確な用語は「キャリー・フォワード」であり、「キャリー・オーバー」という言葉は繰り越しと繰り戻しの両方を指す一般的な言い回しであるとして、2004年度の代替ミニマム税計算上の欠損金は、過去の年度に対してではあるもの、「キャリー・オーバー」されたものであると主張していました。

 

これに対し、連邦租税裁判所は、納税者の主張は論理性を欠いており、議会の立法意図に反する結果を招くものであるとして、内国歳入法の規定は代替ミニマム税計算上の欠損金の過去の年度への「キャリー・オーバー」を容認するものではないとの判決を下しました。

 

今回の判決で第9巡回区連邦控訴裁判所は、「キャリー・オーバー」という用語は、ある課税年度から後の課税年度に欠損金を繰り越すことを単純に意味するものであるとして、連邦租税裁判所の判決を支持する判断を示しています。

 

IRS:特定の風力発電施設に関連する電力購入契約に関する個別通達を破棄

12月7日、IRSは、特定の風力発電施設に関連する電力購入契約の価値を減価償却の対象となる当該施設の簿価に組み込むべきであるとした個別通達201214007号を破棄する新たな個別通達201249013を発表しました。

 

旧個別通達(2012年4月6日発表)においては、発電した電力が購入契約の対象となっている風力発電施設を買収した場合、買収価格は電力購入契約には割り振らず、 電力購入契約の価値に相当する分は減価償却の対象となる固定資産の簿価に組み込むべきであるとの見解が示されていました。

 

旧個別通達で示されている見解は、再生可能エネルギー関連のプロジェクトに対する奨励制度上、いくつかの影響を及ぼす可能性がありました。例えば、電力購入契約の価値が再生可能エネルギーを利用した発電設備の減価償却の対象となる簿価に組み入れられた場合、電力購入契約が個別の資産として取り扱われた場合と比較して、格段に短い期間での償却が可能となります(再生可能エネルギーを利用した発電設備は5年で加速度償却するのに対し、電力購入契約は15年の定額償却)。また、旧個別通達の見解を適用すると、投資税額控除ならびに補助金給付制度の対象となる再生可能エネルギーを利用した発電設備の税務上の簿価を増額することが可能となります。

 

今回発表された新個別通達において、IRSは、旧個別通達は現行のIRSの見解を正確に反映しておらず、買収価格のうち電力購入契約の価値に相当する部分は、風力発電施設ではなく電力購入契約に割り振るべきであるとしています。

 

 

201211

 

修繕費の取り扱いに関する財務省規則を2013年中に最終化

11月20日、IRSは、有形資産の修繕費の損金化と資産計上の基準に関する財務省規則を2013年中に最終化する予定であるとの公告(Notice 2012-73)を発表しました。

 

2011年12月、財務省ならびにIRSは、修繕費の取り扱いに関する新たな規則草案ならびに同内容の暫定規則を発表し、2008年に発表された規則草案を撤回しました。当該暫定規則は、2012年1月1日以降に開始する課税年度に適用するとされていましたが、書面ならびに2012年5月9日の公聴会で多くの意見が寄せられました。

 

今回の公告によれば、最終規則は、2014年1月1日以降に開始する課税年度に適用されますが、納税者の選択により2012年1月1日以降に開始する課税年度に遡及適用することも認められる予定です。少額資産に関する特別規定、日常的保守費用に関するセーフハーバー規定、固定資産の除却に関する規定等への準拠方法に係わる暫定規則の規定の一部は、簡素化等を目的とした改訂が見込まれています。改訂にあたっては、小規模事業者の救済措置に関するものも含め、寄せられた意見を考慮するとしています。

 

また、この公告によれば、最終規則の発効前に、2012年1月1日以降に開始する課税年度において暫定規則の適用を希望する納税者は、従来通り手続細則2012-19号ならびに同2012-20号の規定に従い、税務会計方針の変更に関するIRSの自動承認を受けることができます。

 

カリフォルニア州:売上比率のみに基づく州間配賦を義務づける「提案39号」を住民投票で可決

売上比率のみに基づく所得の州間配賦を義務づける「提案39号」がカリフォルニア州の住民投票により可決されました。これにより、対象となる納税者は、2013年1月1日以降に開始する課税年度において、売上比率のみに基づき所得をカリフォルニア州に配賦することが義務づけられます。

 

売上比率のみに基づく州間配賦を義務づける規定は、総収入の50%超を農業、鉱業、貯蓄組合業、銀行業、金融業を含む「適格事業活動」から稼得する納税者には適用されません。

 

「適格事業活動」を営む法人を含むユニタリー・グループの場合には、グループ全体の総収入の50%超が適格事業活動から発生していない限り、売上比率のみに基づく州間配賦が義務づけられます。

 

カリフォルニア州:州税務当局が多州間租税協定に基づく州間配賦に関する判決を上訴

11月13日、カリフォルニア州税務当局(FTB)は、売上比率の2倍加重を定めた条文規定に拘らず、多州間租税協定に基づく3要素(売上比率、有形資産比率、人件費比率)の単純平均値による所得の配賦を認めた高等裁判所の判決(Gillette Co. v. Franchise Tax Board, A130803 (Cal Ct. App. October 2, 2012))を不服として、州最高裁判所に上告しました。

 

FTBは、上告受理の申立てにおいて、判決が確定した場合には州財政に7億5千万ドルの負担をもたらし、多州間租税協定に加盟している他州にも影響を及ぼすと主張しています。また、同協定の加盟州は、協定が定める所得の配賦方法を後の立法により修正するためには、協定から全面的に脱退しなければならないとは理解していないとして、1972年の多州間租税協定会議の議事録を証拠として提出しています。

 

ミシガン州:州高裁が州事業税の計算上の多州間租税協定の選択権を却下

11月27日、ミシガン州控訴裁判所は、ミシガン州事業税法上、適用が義務づけられている売上比率のみに基づく所得の州間配賦に代えて、多州間租税協定に基づく州間配賦方法を選択することの可否に関する判決を下しました(International Business Machines Corp. v. Dep’t of Treasury, No. 306618 (Mich. Ct. App. November 20, 2012))。同裁判所は、カリフォルニア州での判決と対照的に、協定への参加は契約の締結と性格が異なり、州事業税法上の州間配賦に関する規定の導入により、協定に基づく州間配賦方法の選択制度は事実上撤廃されたと見なすべきであるとの判断を下しました。

 

連邦請求裁判所:再生可能エネルギー補助金の申請者による損害賠償請求を棄却

連邦請求裁判所は、連邦政府の主張を認め、再生可能エネルギー補助金の申請者による損害賠償請求を棄却する判決を下しました(LCM Energy Solutions v. United States, No. 12-321C (Fed. Cl. November 26, 2012))。当該補助金制度は、「2009年米国再生・再投資法」により導入され、代替エネルギー設備の開発に対し、連邦投資税額控除もしくは連邦生産税額控除の代わりに現金で補助金を与えるものです。

 

本件では、政府が申請額の54%しか補助金を支払わなかったことから、申請者が訴訟を提起し、申請額全額の支払いに加え、補助金の支払いが遅れたことによる経済的損害の賠償を求めていました。

 

連邦請求裁判所は、下級審の判決を支持し、補助金の申請額全額の支払いを命じましたが、損害賠償の請求については、連邦政府の主張を認めて棄却しました。申請者は、経済活動の活性化を狙った議会の立法の趣旨を実現するためには損害賠償の支払いが必須であると主張していましたが、裁判所は、立法の趣旨の実現を目的とした損害賠償の支払いは前例も法的根拠ないとして、この主張を退けています。

 

IRS:個人納税者登録番号申請手続を改定

11月29日、IRSは、個人納税者登録番号(ITIN)の申請要件の厳格化と手続の改定を発表しました(IR-2012-98)。これにより、ITINが正当な税務目的でのみ使用されていることを担保するため、ITINの有効期間が新たに設定され、取得後5年間で失効することになりました。また、申請時に提出する証明書等は原本もしくは発行元政府機関による認証済みのコピーであることが引き続き必要となり、公証人による証明は受け付けられない等、ほとんどの暫定的規定が恒久化されています。

 

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