税務アップデート 

「税務アップデート」では、米国の税務に関する立法、司法、行政動向のうち、在米日系企業に影響が大きいと思われるものについて最新情報を提供しています。内容に関するご質問は、貴社担当パートナーまたは野本 誠・税務部門パートナー(Eメール: mnomoto@kpmg.com 電話: 212 872 2190)までお問い合わせください。

 

201210

 

カリフォルニア州:多州間租税協定に基づく所得の配賦を再度認める州高裁判決

10月2日、カリフォルニア州控訴裁判所は、多州間租税協定に基づき、3要素(売上比率、有形資産比率、人件費比率)の単純平均値により所得を配賦することを認める判決を再び下しました(Gillette Co. v. Franchise Tax Board, A130803 (Cal Ct. App. October 2, 2012))。 同裁判所は、7月24日にも同様の納税者勝訴の判決を下していますが、8月8日に自らの判断で判決を破棄しています。

 

今回の判決によれば、カリフォルニア州は、争点となっている年度において多州間租税協定を批准する条文の撤廃や同協定からの脱退をしておらず、同協定に法的に拘束されるため、売上要素の2倍加重平均値の使用を義務づけた州税法の条文に拘らず、納税者は同協定に基づく3要素の単純平均値による所得の配賦を選択する権利があるとしています。

 

今回の判決は、7月の判決とほぼ同一の内容ですが、裁判の口頭弁論終了後に多州間租税協定から脱退する法案(上院法案第1015号)が成立したことに言及しています。

 

また、この判決を受けて、カリフォルニア州税務当局(FTB)は、10月5日に公告を発表しています。FTBの見解によれば、3要素の単純平均値に基づく配賦の選択は、期日までに提出された確定申告書上で行わなければならず、修正申告書上では行うことができません。このため、暦年を課税年度とする納税者は、2012年10月15日が期日となる2011年度の確定申告書上で選択を行うか否かの判断が必要となりますが、今回の判決が後に州最高裁判所により覆された場合、100万ドル超もしくは税額の20%超の追徴に伴い賦課される20%の特別重加算税の対象となるリスクがあります。ちなみに、この重加算税は、情状等による免除が認められません。

 

なお、カリフォルニア州の司法制度上、裁判所の判決は、判決日から30日を経過しないと確定しません。従って、10月15日以前に提出する申告書上で多州間租税協定に基づく選択を行う場合には、確定していない判決に依拠することになります。FTBは、10月5日付の公告において、今回の判決が後日州最高裁判所で覆された際には、特別重加算税の対象となるリスクがあることを強調しています。

 

また、FTBは、10月5日付の公告において、州最高裁により判決が覆されない場合でも、選択手続が確定申告期日までになされていないこと等を理由に還付請求を阻止する方針を示しています。一方で、FTBは、権利を保留するための還付請求手続に関する通達を発行しましたが、この問題に法的な決着が着くまでこれらの請求は処理しないとしています。

 

FATCAデューデリジェンスとその他の手続のタイムラインに関する公告

IRSは、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)に基づき、源泉徴収義務者ならびに外国金融機関(FFI)が実施すべきデューデリジェンスとその他の手続のタイムラインに関する公告(Announcement 2012-42)を発表しました。これは、2012年2月に発表された財務省規則草案で示されたFATCA規定履行体制導入のタイムラインにおいてFFIが直面することが予想される実務上の問題点に関して寄せられたコメントを反映したものです。

 

公告の骨子は、次の通りです。

 

  • 参加FFIと登録型みなし遵守FFIを含む源泉徴収義務者に対し、原則として、2014年1月1日までに新規口座開設手続の導入を義務づけ。
  • 「既存債務」の定義を修正。
  • 既存債務に関するデューデリジェンスの実施に関する経過措置を規定。
  • 参加FFIに対し、2015年3月31日までに暦年2013年ならびに2014年の情報報告書の提出を義務づけ。
  • 「源泉徴収対象額」ならびに「経過措置対象債務」の定義の明確化。
  • 経過措置対象債務の範囲の拡大。

 

この公告の内容は、財務省規則が最終化された際に反映される予定です。

 

カリフォルニア州:輸出売上へのスローバック・ルールの適用に関する主席法務官通達

FTBは、2011年1月1日以降に開始する課税年度における輸出売上へのスローバック・ルールの適用の可否に関する主席法務官通達を発表しました。カリフォルニア州税法のスローバック・ルールは、カリフォルニア州内から納税者が課税対象となっていない管轄区に商品(有形資産)が発送された場合、当該売上は州間配賦比率の計算上カリフォルニア州に帰属する売上として取り扱われます。州税法の施行規則によれば、納税者が米国外の国で「課税対象となっている」か否かを判断する場合には、租税条約によらず米国の国内法に照らして、当該国における活動内容が申告義務の認定に繋がるか否かを基準とすることが定められています。

 

2011年1月1日以降に開始する課税年度においては、カリフォルニア州税法上、いわゆる「経済的ネクサス」の考え方が適用され、カリフォルニア州内の売上が50万ドル超、あるいは州内の有形資産か人件費が5万ドル超となっている場合には、州法人税の申告義務が発生します。今回の通達の対象となった納税者は、複数の外国に商品を販売していますが、これらの諸外国における当該納税者の活動に経済的ネクサスの基準を適用した場合、売上が50万ドルを超える国においては申告義務が認定されることになるため、スローバック・ルールの適用上、「課税対象になっている」と見なすべきであるとしています。

 

IRS主席法務官通達:様式W-8の電子的手段による送付について

10月29日、IRSは、手書きで署名され電子的手段(PDFやファックス)で送付された様式W-8(外国居住者証明書)に源泉徴収義務者が依拠することの可否に関する主席法務官通達をウェブサイトで公開しました(AM2012-008)。これによれば、電子的手段により送付された様式W-8は、源泉徴収義務者が一定の確認作業等を行う等、通達に示された要件が満たされている場合には、財務省規則の規定を満たすものとして取り扱うことができるとしています。

 

 

20129

 

連邦控訴裁判所(第6巡回区):適格解雇手当に対する社会保障税の還付を支持

9月7日、第6巡回区連邦控訴裁判所は、解雇手当は社会保障(FICA)税法上の賃金に該当しないとの連邦地方裁判所の判断を支持する判決を下しました(In re Quality Stores, Inc., No. 10-1563 (6th Cir. September 7, 2012))。

 

本件の当事者である会社は、破産申請前に75名、破産申請後に残りの従業員全員を解雇し、社則に則って支給した解雇手当を賃金として源泉徴収票(様式W-2)に記載するとともに、個人所得税ならびに社会保障税を徴収・納付しましたが、そのうち約100万ドルの社会保障税の還付を破産手続中に請求しました。破産裁判所は、解雇手当が社会保障税法上課税対象となる賃金から除外されるべき追加失業補償に該当するとして還付請求を全額認め、連邦地方裁判所も破産裁判所の判断を支持しました。

 

今回の判決において、第6巡回区連邦控訴裁判所は、追加失業補償は、議会により、「人員削減もしくは工場の閉鎖や事業からの撤退等に直接的に起因する従業員の一時的もしくは恒久的な強制解雇に伴い、社則に基づき従業員に支払われた所得」と定義されており、当該事案の解雇手当は、従業員の所得であるものの、社会保障税の課税対象外となる追加失業補償であると認定し、下級審の判断を支持しました。

 

なお、当該判決は、解雇手当は社会保障税の課税対象であると認定した連邦巡回区控訴裁判所の判例(CSX Corp. v. United States)と相反するものです。

 

財務省:通牒230号の指定意見書に関する基準の変更を提案

9月14日、財務省は、IRS公認の税務アドバイザーによる書面での税務アドバイスに関する基準の変更を提案する規則草案(REG-138367-06)を発表しました。

 

税務の実務家の間で書面でのアドバイスに関する基準について懸念が存在していることから、財務省およびIRSは、通牒230号10.35条により現在規定されている基準を削除することを提案しました。この規則草案が最終化された場合、関連する事実関係(事実や法律に関して依拠する仮定条件を含む)および事実関係への法令の適用について書面アドバイスの中に完全な記述を含める必要がなくなります。また、「通牒230号に基づく指定意見書に関する免責文」を各種文書や電子メールを含む送信データに記載する必要もなくなります。

 

連邦控訴裁判所(第2巡回区):製造プロセス改善のための消耗品は試験研究費税額控除の対象外

9月7日、第2巡回区連邦控訴裁判所は、製造プロセス改善のために使用された消耗品は試験研究費税額控除の対象外であるとの連邦租税裁判所の判断を支持する判決を下しました(Union Carbide Corp. v. Commissioner, No. 11- 2552 (2d Cir. September 7, 2012))。

 

1994年から1995年度において、納税者は、製品ではなく製造プロセスの改善方法を模索するため、製造工場で多くの試験研究活動を実施し、関連費用を適格費用として申請していました。

 

試験研究費税額控除に関する条文や財務省規則では、税額控除の対象となる費用には、「適格試験研究活動において使用された消耗品に関する支出が含まれる」と規定されていますが、その一方で、財務省規則には、「間接的試験研究費」に該当する消耗品に関する支出は適格とは見なさないとの規定もあります。ただし、直接的試験研究費と間接的試験研究費の区別は定義されていません。

 

本件における納税者は、試験研究活動の実施により必要となった追加の消耗品のみならず、試験研究活動期間中の製造活動において使用されたすべての消耗品について税額控除を申請していましたが、IRSは、試験研究活動の実施に拘らず発生したであろう消耗品については、税額控除は認められないと主張していました。

 

2009年3月、連邦租税裁判所は、納税者の消耗品に関する費用全額についての税額控除の申請は却下し、試験研究活動実施のために追加で発生した消耗品に関する費用についてのみ税額控除を認める判決を下しました。

 

今回の判決で、第2巡回区連邦控訴裁判所は、争点となっている費用は間接的試験研究費の範疇を超えるものではないとして、連邦租税裁判所の判断を支持しました。また、財務省規則が直接的試験研究費と間接的試験研究費の区別を明確に定義していないことを認めつつも、試験研究活動の実施に拘らず納税者の通常の製造プロセスで発生が見込まれた消耗品の費用は間接的費用であると認定したIRSの判断は冷静かつ合理的であり、税額控除制度の立法の趣旨や経緯に合致したものであると評価しています。

 

上院調査小委員会:多国籍企業による海外関連会社を通じた租税回避の実態を調査

9月20日、連邦議会上院常設調査小委員会は、内国歳入法の規定や会計上のルールを利用した米系多国籍企業による海外への所得移転に関する証言に基づく報告書を発表しました。

 

同小委員会は、IRS、米国財務会計基準審議会(FASB)、多国籍企業、会計事務所から証人を召喚し、「移転価格税制やサブパートF条項等に関する税法規定や、恒久的に再投資される国外所得に関する繰延税金負債の計上基準を定めた会計原則審議会(APB)意見書第23号等の会計基準の弱点が米国を本拠地とする多国籍企業に知的財産や利益を海外に移転することを奨励している」とする81ページに上る報告書を作成し、関連資料や証言記録とともにウェブサイトに公表しました。

 

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