税務アップデート 

「税務アップデート」では、米国の税務に関する立法、司法、行政動向のうち、在米日系企業に影響が大きいと思われるものについて最新情報を提供しています。内容に関するご質問は、貴社担当パートナーまたは野本 誠・税務部門パートナー(Eメール:mnomoto@kpmg.com 電話: 212 872 2190)までお問い合わせください。

 

2012年8月

 

ニューヨーク州:州地裁がMTA雇用税を違憲認定

ナッソー郡を管轄とするニューヨーク州地方裁判所は、州議会による「メトロポリタン地区交通局(MTA)雇用税」の立法化は州憲法に違反するものであるとの判決を下しました(Mangano v. Silver, motions #013-#017 (N.Y. Sup. Ct. August 22, 2012))。

 

MTAの財政難に伴い、州議会は2009年にMTA雇用税を新たに課税する法律を可決しました。MTA雇用税は、州南部の12の郡を含む「メトロポリタン通勤地区(MCTD)」内の雇用者ならびに自営業者を対象としており、従業員の給与に対する課税は2009年3月1日、自営業者の所得に対する課税は同1月1日に遡及して実施されました。MTA雇用税の税収は、MTAの運営目的のみに充当されます。MTA雇用税導入法案は、州議会下院議員の60%、上院議員の52%の賛成により可決されています。

 

しかしながら、州憲法によれば、州内の地方自治体の財産、問題、政府に関する「特別な法律」は、地方自治体政府の同意もしくは州知事の必要性に基づく要請と州議会上下両院それぞれでの3分2以上の賛成がなければ立法化できないため、影響を受けるMCTD内の郡や市の一部は、MTA雇用税の合憲性を問う訴訟を提起していました。

 

州地裁は、MTA雇用税導入法案は、地方自治体の財産、問題、政府に関するものであり、また州内のすべての郡ではなく、特定の郡のみに適用されるものであるため、「特別な法律」に該当すると認定しました。また、議会の3分の2の賛成を伴う知事の要請については、特別な法律が「州全体の重要な問題を解決する」ためのものであれば例外的に免除されますが、MTAの財政難はMCTD内の郡のみに影響し、またMTA雇用税は州全体ではなくMCTD内でのみ課税されることから、例外措置は適用されないとしています。この結果、州地裁は、MTA雇用税の州議会による立法化は違憲であるとの判断を下しました。

 

カリフォルニア州:州高等裁判所がGillette判決の取り消し・再審を決定

8月9日、カリフォルニア州高等裁判所は、Gillette事件の再審を決定し、自らの7月24日付の判決(Gillette Co. v. Franchise Tax Board (No. A130803 (Cal. Ct. App. July 24, 2012))を取り消しました。

 

本年7月、カリフォルニア州高裁は、売上比率を2倍加重した3要素(売上比率、人件費比率、有形資産比率)に基づく比率を適用して所得をカリフォルニア州へ配賦することが一般事業法人に州税法上義務づけられているにも拘らず、多州間租税協定(MTC)の規定に基づき、3要素の単純平均に基づく比率による所得の配賦を認める判決を下しました。

 

判決後、カリフォルニア州税務当局(FTB)が再審請求を行うと同時に、納税者側の弁護団も判決内容に一定の修正を加えることを請求していましたが、州高裁はいずれの請求も認めておらず、今回の再審決定は「然るべき理由」に基づく州高裁自身の判断によるものとしています。

 

IRS:LB&I局調査事案の争点優先区分制度を廃止

8月17日、IRS大規模事業者・国際(LB&I)局は、税務調査の争点の優先区分(ティアード・イシュー)制度を廃止し、国内取引に関する争点は「イシュー・プラクティス・グループ」、国際取引に関する争点は「インターナショナル・プラクティス・ネットワーク」と呼ばれる内部組織を通じて知識を共有する方針を示した内部通達(LB&I-4-0812-010)を発行しました。

 

LB&I局およびその前身部門は、2006年以来、優先区分制度に基づき重点調査項目の指定や、税法施行上の脅威となり得る特定の法人税法上の問題点への対応を行ってきました。当初、当該制度は、IRSが租税回避行為と見なしたタックス・シェルターへの対策等を念頭に、取り扱いの一貫性の確保や対応の統一を目的として導入されました。

 

今回の通達によれば、優先区分制度は、タックス・シェルター型の問題の調査には一定の効果があったと思われる一方、今後の税務行政上の優先課題を管理し、調査官にガイダンスを与える上では異なる手法が必要であるとしています。当該通達の発行に伴い、優先区分I、II、IIIの争点の区分指定は解除され、他の争点と同様のリスク評価と調査の対象となります。

 

特定の想定元本契約ルールの適用を2014年まで延期

8月30日、財務省とIRSは、米国源泉配当の支払いを参照する想定元本契約を保有する米国非居住者ならびに外国法人に対するガイダンスを示した2012年1月発表の暫定規則および規則草案の修正を発表しました。これにより、当該暫定規則および規則草案に基づく特定想定元本契約に関するルールの適用開始日は、当初の2013年1月1日から1年延長され2014年1月1日となります。今回の発表によれば、当初提案されていた2013年1月1日付の適用開始では、特定想定元本契約や株価連動型金融商品に関して義務づけられる源泉徴収のためのシステムを開発しテストする十分な時間がないとの多数の意見が寄せられたため、適用開始を1年延期したとしています。

 

IRS:FATCAの本人確認番号申請書およびFFIステータス登録書に関する意見を公募

IRSは、外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)の本人確認番号申請書(様式8956)ならびに参加外国金融機関(FFI)、限定FFI、登録型みなし遵守FFIステータス登録書(様式8957)の作成に関する意見の公募を開始しました。公募する意見は、①収集する情報の質、有用性、透明性の向上、②情報収集の事務的負担の軽減、③情報提供のためのシステムを運営、保守、外部委託するためのコストの見積り等に関するものです。意見の公募期間は2012年10月15日までとなっています。

 

IRS:2012年分のFATCA情報報告のための様式W-8IMYの草案を発表

8月14日、IRSは、2012年度のFATCAに基づく情報報告を行うための様式W-8IMY(外国仲介人、外国フロースルー事業体ならびに特定米国支店の米国源泉税目的の居住者証明)の草案をウェブサイトで発表しました。当該様式は、連邦管理予算局(OMB)の承認を経て本年12月中に最終化される予定です。

 

2012年7月

 

カリフォルニア州:州高裁が3要素の単純平均に基づく州間配賦比率の適用を容認

カリフォルニア州高等裁判所は、売上比率を2倍加重した3要素(売上比率、人件費比率、有形資産比率)に基づく比率を適用して所得をカリフォルニア州へ配賦することが一般事業法人に州税法上義務づけられているにも拘らず、多州間租税協定(MTC)の規定に基づき、3要素の単純平均に基づく比率により所得の配賦を認める判決を下しました(The Gillette Co. v. Franchise Tax Board, No. A130803 (Cal. Ct. App. July 24, 2012))。

 

カリフォルニア州は、1974年にMTCに加盟しましたが、1993年以降、売上比率を2倍加重した州間配賦比率の適用を義務づけています。州高裁によれば、カリフォルニア州は、MTCに加盟したことにより、MTCの州間配賦規定の適用を州間通商を営む納税者に認める契約を締結したことになるとしています。

 

仮に他のMTC正式加盟州(アラバマ、アラスカ、コロラド、ワシントンDC、ハワイ、アイダホ、カンザス、ミシガン、ミネソタ、ミズーリ、モンタナ、ニューメキシコ、ノースダコタ、オレゴン、サウスダコタ、テキサス、ユタ、ワシントン)で同様の判決が出た場合、MTCの規定と異なる州間配賦方法の適用を義務づけた州税法や規則は施行できなくなる可能性があります。また、売上比率の2倍加重の可否に加え、市場源泉法と提供原価法の選択や、特定業界向けの特殊な配賦比率計算方法等、MTCの規定と異なる取り扱いを義務づけた条項の有効性も問われる可能性があります。

 

カリフォルニア州税務当局(FTB)がこの判決を不服として上訴するか否かは定かではありませんが、金額的な影響を考慮すると、上訴の可能性は高いものと思われます。また、2012年6月27日にMTCへの加盟を取り消す法案(S.B. 1015)が成立したことも問題を一層複雑化させています。この法案には、税額計算に影響を及ぼす選択手続は、期日までに提出された確定申告書上で行わなければならず、一旦なされた選択は変更することができないとの規定が含まれていますが、この規定は税法の改正ではなく、従来の税法規定の追認にすぎないとされています。なお、当該法案は、議会の3分の2ではなく過半数の賛成により可決されたため、増税に繋がるすべての州法の改正について議会の3分の2の賛成を義務づけた住民投票26号に反するのではないかとの指摘もなされており、この問題の今後の行方をさらに不透明なものとしています。

 

ニュージャージー州:サービスとしてのソフトウェアは売上税の課税対象外

ニュージャージー州税務当局は、クラウド・コンピューティングにおけるサービスとしてのソフトウェア(SaaS)が州売上税の課税対象になるか否かについての判断を示した通達を発表しました。この通達の対象となった納税者は、ユーザーが入力したデータに基づきパズルを作成するソフトウェアをウェブ上で公開し、月額手数料を徴収していました。なお、作成されたパズルは、ダウンロード可能なPDF形式で顧客に提供されていました。

 

州税務当局によれば、サービスとしてのソフトウェアの場合、ソフトウェアならびにホスト・サーバーを保有・運営する権利は売り手が保有し、顧客はこれらにインターネットを通じてアクセスしなければならず、ソフトウェアのダウンロードやコピー、改変等をすることができない等の特徴が見られます。州税務当局は、これらの条件が揃っている場合には、サービスとしてのソフトウェアは州売上・使用税の課税対象とはならないとしています。

 

マサチューセッツ州:特定のクラウド・コンピューティング・サービスに関する通達

マサチューセッツ州税務当局は、特定のクラウド・コンピューティング・サービスが州売上・使用税の課税対象となるか否かに関する個別通達を発表しました。この通達の対象となった納税者は、ソフトウェアの使用をはじめ、当該納税者が提供する様々なサービスを利用するために必要なインフラ、プラットフォーム、ソフトウェア等を顧客に提供しています。また、クラウド・コンピューティング・サービスの他に、データ送信サービスや、データ保管サービスも別料金で提供しており、顧客が当該納税者のサーバーにコンテンツ、データ、ソフトウェア等を保管・保存することができます。クラウド・コンピューティング・サービスを利用するには、顧客が特定のオペレーティング・システムを使用していることに加え、顧客自身のソフトウェアかインターネット上で公開されている無料のオープン・ソース・ソフトウェア、もしくは第三者から当該納税者に供与されているソフトウェアを使用することが必要となります。顧客が当該第三者のソフトウェアを使用する場合には、クラウド・コンピューティング・サービスの対価は割高となりますが、当該ソフトウェアは、顧客に譲渡されることはなく、サブライセンス契約も存在していません。

 

マサチューセッツ州の売上税に関する規則によれば、顧客によりダウンロードされた場合でも、顧客が業者のサーバーにアクセスして使用する場合(SaaS)でも、既製のソフトウェアの販売は原則として課税対象とされています。州税務当局は、顧客自身のソフトウェアや無料のソフトウェアを使用してクラウド・コンピューティング・サービスが利用されている場合には、既製ソフトウェアの販売行為は発生していないため、課税対象外であるとの見解を示しています。一方、納税者が供与するソフトウェアを使用してクラウド・コンピューティング・サービスが利用されている場合には、クラウド・コンピューティング・サービスの対価にソフトウェアのライセンス料が含まれていることから、課税対象となるとしています。また、データ送信料については、データがマサチューセッツ州内から送信されているか州内で受信されており、対価の請求先が州内の住所となっている場合、マサチューセッツ州源泉の州間電気通信サービスとして課税対象となるとしています。データ保管サービスについては、データが保管されているサーバーを顧客が直接的にコントロールすることができないため、非課税のサービスとなるとの見解が示されています。

 

* * * * *

 

本文中の税務アドバイスは、弊社クライアントもしくはその他の個人や事業体が、①納税者に対して賦課される可能性があるペナルティーの回避を目的として使用することや、②調査対象事項について宣伝、マーケティング、推奨等を行うことを意図したものではなく、従ってこれらの目的には使用できません。

記事中の見解や意見は著者個人のものであり、必ずしもKPMG LLPのものではありません。また、記事中の情報は全て一般的なものであり、特定の個人もしくは事業体の状況への適用を意図したものではありません。