自然災害に対する税務上の救済措置 

【基本情報】

 

2011年初頭、タイ歳入局は自然災害の被災者が、タイ政府またはその他の機関から受け取った寄付金及び補償金に対して所得税免税処置を発表致しました(Royal Decree No.527)。

 

RD No.527では、寄付金支払者に関しては、法人所得税計算の際、現金または物品を寄付した場合、課税所得の2%を上限として、当該寄付金等の額を損金算入することができると規定されています。また、被災した会社が保険会社より受領する保険金について、当該保険金額が保険対象となった資産の簿価を超える場合において、原則としてその超える部分の金額は課税対象所得にはならないと規定されています。

 

以下では、RD No.527について解説させて頂きます。

 

【質問 1】当社は洪水により固定資産に関して被害を受けましたが、法人所得税計算上、簿価全額を損金に計上することは可能ですか?

 

被災した会社が当該固定資産に対し保険に加入しているケースと加入していないケースで取り扱いが異なります。

(保険に加入しているケース)

保険会社から「保険金を受領する年度」において、当該簿価相当額を損金の額に算入することができます。つまり、保険金受領前に事業年度が終了した場合、当該年度は「保険金受領前事業年度」ですのでその事業年度では損金の額に算入することは出来ません。

(保険に加入していないケース)

被災後、即座に当該簿価相当額を損金の額に算入することができます。しかしながら、この場合は原則として、固定資産を紛失した際と同様の証明(固定資産台帳、警察等への紛失証明、Invoice等)が必要となります。なお、関連書類が紛失していることも十分に想定される状況ですので、今後歳入局から何らかの救済措置が発表されるものと思われます。

 

 

【質問 2】被災した会社が保険会社より保険金を受領した場合、当該保険金は法人所得税の計算上、益金の額に算入する必要がありますか?

 

原則、損害額が保険金額を超える場合、その超える部分の金額は損金の額に算入されます。一方、保険金額が損害額を超える場合、その超える部分の金額についての取り扱いは以下の通りとなります。

2011年1月1日以後にタイ国内で発生した自然災害により、保険会社から受領した保険金については、被害を受けた固定資産の簿価を超える部分の保険金額は、保険金受領年度の益金の額に算入する必要はありません。

しかしながら、災害による操業停止の損失を補填する利益保険の類については、課税所得として益金の額に算入する必要があります。

 

 

【質問 3】被災した会社が保険会社より保険金を受領した場合、当該保険金についてVATを計上する必要がありますか?

 

保険会社からの保険金の受領は、物品の販売および役務の提供には該当しませんので、VATを計上する必要はございません。なお、操業停止の損失を補填する利益保険についても、同様にVATを計上する必要はございません。

 

 

【質問 4】被災した会社が物品の寄付を受けた場合、VATの取り扱いはどのようになるのでしょうか?

 

物品の寄付を受けた会社は、仕入VATを計上することは認められておりません。一方、物品の寄付をした会社は、原則として売上VATが課されることとなります。
 

 

【質問 5】毎月7日に申告及び納付が義務付けられている給与やサービス対価の支払いに関する源泉税について、申告期限の延長等の措置はありますか?

 

歳入局は内国歳入法で定める以下の申告書(税目としては、法人税、源泉税及び付加価値税)につき、2011年12月30日まで申告期限を延長する旨の救済措置を発表致しました。なお、本発表では対象となる納税義務者は以下の地域に所在することが求められておりますが、他の地域についても洪水の直接的な被害を受けた納税義務者については、同様の取り扱いがされるよう歳入局で調整中です。


 <対象となる申告書>


PND1., PND2., PND3., PND53, PND54, PND51, PND50, PND55, and PND 52, PP30, PP36, PT40, or Sor 4 Kor

 

 <対象地域>

 

1.1 Regional Revenue Office 4 :
  (1) Every Area Revenue Branch Office (“ARB”) in Pranakorn Sri-Ayutthaya Area Revenue Office (“AR”) 1
  (2) Every ARBs in Pranakorn Sri-Ayutthaya AR 2
  (3) Every ARBs in Chai Nat AR
  (4) Every ARBs in Sing Buri AR
  (5) Every ARBs in Ang Thong AR
  (6) Every ARBs in Uthai Thani AR
  (7) Every ARBs in Lop Buri AR
  (8) Every ARBs in Pathum Thani AR 1
  (9) Every ARBs in Pathum Thani AR 2
  (10) Every ARBs in Nonthaburi AR
  (11) ARB Muang Saraburi, ARB Kang Khoi, ARB Baan Mor, ARB Soa Hai, ARB Don Pud, ARB Nong Don, and ARB Chaream Phrakead in Saraburi AR.

1.2 Regional Revenue Office 6 is ARB Banglen in Nakorn Phathom AR 1.
1.3 Regional Revenue Office 7:
  (1) ARB Muang Sukhothai, ARB Sawankhalok, ARB Srisumlong in Sukhothai AR.
  (2) ARB Muang Nakornsawan, ARB Ta Tako, ARB Kroagphra, ARB Banpotpisai,
  (3) ARB Chumseang, ARB Lardyao, ARB Payuhasiri, ARB Takree, ARB Krawleaw in Nakornsawan AR.
  (4) ARB Muang Pitsanulok, ARB Banglakum, ARB Bangkathum,
  (5) ARB Neanmaprang, ARB Wangthong, ARB Phompiram in Pitsanulok AR.
  (6) Every ARBs in Pitchit AR.
1.4 Regional Revenue Office 8:
  (1) ARB Muang Chiang Mai 1, ARB Muang Chiang Mai 2,
  (2) ARB Hangdong, ARB Saraphee, ARB Hod, ARB Mae Jam in Chiang Mai AR 1.
  (3) ARB Fang, ARB Sansai in Chiang Mai AR 2.
1.5 Regional Revenue Office 9 ARB Warinchumrab in Udonthani AR.
1.6 Regional Revenue Office 10 are ARB Dansai in Loei AR

 

 

     <バンコク都対象地域>

 Regional Revene Office 1:

  (1) ARB Chatujuk in Bangkok AR7.
  (2) ARB Bang-Kaen in Bangkok AR8.
  (3) ARB Laksi in Bangkok AR9.
    - Regional Revenue Office 2 are every ARBs in Bangkok AR21.
    - Regional Revenue Office 3 as follows:
      (1) Every ARBs in Bangkok AR25.
      (2) Every ARBs in Bangkok AR26.
      (3) ARB Bangkok-Noi in Bangkok AR30.
    - Regional Revenue Office 6 are every ARBs in Area Revenue Office in Nakorn Phatom 1, Nakorn Phatom 2, Samut-Sakorn 1, Samut Sakorn 2, and Sunpanburi.

  

 【英語版詳細】

[Revenue Department News announced on 2 November, 2011 [PDF, 63.4 KB]]

[Revenue Department News announced on 3 November, 2011 [PDF, 24 KB]]

 
 

【質問 6】今回の災害を受けて、BOIから何らかの免税措置等の恩典は与えられるのでしょうか?

 

BOIの法人所得税免税恩典については、現在Zoneごとに3年から8年の免税恩典期間が定められておりましたが、2011年10月25日の閣議において、上記のほうなZoneの区分を2012年末までに申請書が提出されたものに限り撤廃し、一律で法人所得税免税期間を8年とする旨の内容が可決されました。

  

対象企業

法人税の免税期間の特例(※1

関税の特例(※1

復旧投資又は新規投資を計画する被災企業

被災した既存の所在地で再投資及び事業の継続を予定している企業

8年間免税(支払配当の源泉税も免除)

(投資奨励第2ゾーンの工業団地内に所在する場合)
+ 3年間の50%減税

(投資奨励第3ゾーンに所在する場合)
+ 5年間の50%減税

投資額を上限とする制限なし

機械装置の輸入関税を免除

新たな投資奨励ゾーンにおいて再投資及び事業の継続を予定している企業

投資額を上限とする制限あり

(同プロジェクトに対する自己資本及び借入金の合計額)(※2

新規投資を計画する被災企業以外の企業

8年間免税(支払配当の源泉税も免除)

(投資奨励第1ゾーンの工業団地内に所在する場合)
+ 3年間の50%減税

(投資奨励第2ゾーン工業団地内又は第3ゾーンに所在する場合)
+ 5年間の50%減税

機械装置の輸入関税を免除

 

※1  2012年12月末日までにBOIに投資奨励の申請をした場合に限る。
※2  同免税措置による免税総額が総投資額を超えないものとする。


2011年12月29日、上記閣議決定の内容を受けBOIから以下のようなニュースレターが公表されました

     

対象企業

法人税の免税期間

免税の上限額

減税の特例

企業既存BOIプロジェクトについて、法人税免税上限額が設定されている被災企業

被災した既存の所在地で再投資を予定している企業

8

投資額の150+既存BOI

プロジェクトの免税残余額

なし

新たな投資奨励ゾーンにおいて再投資を予定している企業

8

投資額の100

なし

既存のBOIプロジェクトについて、法人税免税上限額が設定されていない被災企業

既存のBOIプロジェクトに対し、

法人税免税恩典期間を

3年間延長(8年を上限とする)

上限なし

既存プロジェクトの免税残余期間が5年~6

2年間の50%減税

既存プロジェクトの免税残余期間が6年~7

4年間の50%減税

既存プロジェクトの免税残余期間が7年~8

5年間の50%減税


 

上記ニュースレターは2011年10月25日の閣議決定内容とは異なっており、また取扱いが不明な点も多いことから、一刻も早いBOIからの取扱規則の発表が望まれます。

 

英語版詳細】 

 

【質問 7】当社が被災した従業員に対して被災手当てを支給した場合、当社の法人所得計算上、当該支給額を損金の額に算入することができますか?

 

会社が被災した従業員の損害を補償することを目的として、被災した従業員に対して金銭を支給した場合には、支給前に当該被災手当てを支給する旨を社内規定・規則に定め、又はその旨を取締役会の決議に基づき被災した全従業員に通知する限りにおいて、当該支給額は法人所得税の計算上、損金の額に算入することが認められます。

 

 

【質問 8】被災した従業員が会社から被災手当ての支給を受けた場合、当該支給額は当該従業員の給与所得として課税がされますか?

 

会社が被災した従業員の損害を補償することを目的として、被災した従業員に対して金銭を支給した場合には、当該支給額は当該従業員の個人所得税の計算上、非課税所得として取り扱われます。

  

 

【質問 9】被災した会社がその機械設備について修復不能な被害を受けた場合で、当社が保険に加入していなかった場合、当該設備の物理的な廃却処理の前に簿価全額を損金に計上することは可能ですか?


原則として、固定資産の廃棄処分損失は、会社がタイ歳入局通達(Department Instruction)No. Paw.58/2538に準拠している限りにおいて、当該資産の簿価相当額を損金の額に参入することができます。係る破損した固定資産の扱いについては、歳入局通達No. Paw 79/2541及びTax  Ruling No. Gor Kor. 0811/09658  を参照し、歳入局に対する証拠書類(物理的な廃棄の事実を示す証拠書類)を備えることが必要となります。

なお、今回の洪水被害に対する特別措置として11月3日に発表された歳入局文書によれば、被害を受けた資産の除却損の取り扱いについて、現状、事業者が保険に未加入である場合には、物理的な廃棄処理を待つことなく即時に損金の額に参入できるとされておりますが、その詳細な手続き等は未だ当局より明らかにされておりませんので、詳細が明確になる前の段階では、上記通達の指示に従われることを推奨します。



【質問 10】タックス・フリーゾーンに所在する会社が被災した場合、関税上の救済措置はありますか?

2011年11月2日に関税局はI-EAT Free Zone、Customs Free Zone 、 保税倉庫に所在する会社について、主に製造業者に重要な以下の項目を含む救済措置を発表しています。これによれば、原材料や設備機械を(保税地域外の)仮工場等に移動する際には関税の課税対象外となります。尚、当該救済措置については2011年10月5日に遡り、以後適用されるものとされています。

  (i) 事業所の一時移転
  (ii) 仮工場・事業所における原材料及び機械設備の輸入
  (iii) 仮工場・事業所への現地調達原材料及び機械設備の搬入
  (iv) 仮工場・事業所における一連の製造・事業活動
  (v) 洪水沈静化後の原材料及び機械設備の再移動
  (vi) 恩典を受けて輸入した原材料、製品、機械設備の廃棄又は販売に際する関税及びその他税金の適用に関する規定


※詳細については【関税局の発表 [PDF, 35.4 KB]】をご参照ください。

 

 

【質問11】会社が本店で一括してVAT又は特定事業税の申告を行っている場合において、支店が被災してしまった場合、どのように申告すればよいでしょうか?


会社がもともと本店で一括してVAT又は特定事業税の申告を行っている場合において、支店が被災したことにより被災しなかった本店分のみの申告が可能である場合、先ずは本店分のみの申告・納付を行い、その後被災した支店分の申告を追加で行う必要があります。なお、被災した支店分の追加申告・納付について2011年12月30日までペナルティーは課されません。



【質問12】会社の事業所が所在する所轄税務当局が被災してしまった場合に、必ずしもその所轄税務当局に対して税務申告・納付をしなければならないのでしょうか?


必ずしもその被災した所轄税務当局に対して税務申告・納付をしなければならないわけでは無く、所轄以外の税務署に対しても申告・納付をすることが認められます。



【質問13】税務上要求される書類が洪水により滅失等した場合、どのような対応をすべきでしょうか?


所轄の警察に滅失等した旨を公式に通知するとともに、滅失等した書類の詳細なリストを提出する必要があります。もしそれが実務上困難な場合には、所轄税務当局の担当官等に個別に相談されることをお薦めします。

 

【質問14】関税について、現時点で各省が公表している軽減措置を教えてください。

 

関税の軽減措置については、BOI及び関税局が以下の内容を発表しています。

① BOI(2011年10月25日発表)
     全ての投資奨励ゾーンにおける機械装置の輸入関税の免除

 

② 関税局(2011年10月25日, 11月29日発表)

    • 被災した機械の代替又は修繕を目的として輸入した機械装置の輸入関税の免除(工業省による被災証明が必要)
    • 被災した完成車メーカー、組立業者、部品メーカーに対する輸入車並びに国内販売用自動車の部品の輸入関税の免除又は減免(注)

      (注)輸入関税の免除の対象及びその要件は、以下の通りとなります。
        (対象法人)
       
    • 車体の製造から塗装、組立てまでの完全な生産工程がある自動車製造工場を有し、かつ、工場がタイの災害対策局長又は地方長官により発表された災害地域に所在する自動車メーカー
        (免税対象)
       
    •  排気量が3,000cc以下の関税分類87.03の乗用車及び関税分類87.04のトラック
    • 輸入する乗用車は、被災した工場が生産していたものと同じ若しくは同様のモデルである必要があり、経済産業局が定める条件に従ったものであること
        (その他の要件)
       
    •  免税対象となる者は、輸入申告者でなければならない
    • 免税対象となる者は、経済産業局から承認文書を取得し、通関の際に提示しなければならない


     

    タイ洪水被害に関する会計・税務の質問 jptaxcenter@kpmg.co.th までお寄せください。

     

     

     

    [Last updated on 23 January 2012]