タイ各所で発生した洪水の会計的影響についてのFAQ 

タイ各所におけるこの度の洪水は多方面への被害をもたらし、また現在も影響は続いています。以下は、洪水及びその他自然災害の会計的影響についてのQ&Aです。

 

なお、本FAQは上場会社が適用すべき会計基準(TFRS for PAEs)を前提に作成されていますが、非上場会社(NPAEs)についても同様の考え方、取り扱いとなる可能性が高いです。しかし実際の監査においては、個々の論点について自社の監査人に確認をする事をお薦めいたします。

 

 

 

一般的事項

 


【質問 1】洪水などの自然災害について、TFRS上に特別な規定が設けられていますか?

 

いいえ。洪水などの自然災害について、TFRS上に特別な規定は設けられていません。

 

 

【質問 2】洪水などの自然災害の、会計処理方法に影響を及ぼすような特性はどのような点でしょうか?

 

洪水などの自然災害は予測不能であり、突然発生し且つ企業活動に重大な影響を及ぼし得ます。従って、洪水が発生する前にマネジメントが行った全ての見積もり、仮定、予測、計画などは、企業への洪水の影響を反映して再度検討される必要があるでしょう。

 

 

【質問 3】どのような企業が洪水の影響の評価を行う必要がありますか?

 

企業は、洪水が自社の活動に損害を与える事で、直接的な影響を受けるかもしれません。また、洪水が仕入先や得意先の活動に損害を与える事で、間接的な影響を受けるかもしれません。これら全てのケースにおいて、企業は洪水の影響の評価を行う必要があるでしょう。

 

 

【質問 4】企業の期末日との関係で、洪水の影響の発生時期は会計処理の方法に影響を与えますか?

 

はい。企業の期末日との関係で、洪水の影響の発生時期は会計処理の方法に影響を与えます。
洪水の影響を会計期間中に受けた企業は、その影響をその会計期間に係る損益計算書及び貸借対照表において認識する必要があるでしょう。
洪水の影響を期末日後に受けた企業は、その影響をその会計期間に係る包括利益計算書及び財政状態計算書において認識する必要はありません。しかし洪水の事業への影響は、TAS 10号「後発事象」に従って「修正を要しない後発事象」として開示する必要はあるでしょう。TAS 10号は重要な「修正を要しない後発事象」に関して、当該事象の性質及び財務的影響の見積もり、又はそのような見積もりが不可能である旨の記述を要求しています。
上記の発生時期による区別は、常に明確に出来るとは限りません。例えば洪水が、まず会計期間中に幾らかの損害を与え、その後期末日が過ぎてから全体的に被害を蒙るかもしれません。そのような場合、会計処理は期末日において判明している事項に基づきなされるべきです。そして、全ての関連事項と、期末日以降に企業に影響を及ぼした未修正事象とが開示の対象とされるべきです。

 

 

【質問 5】洪水が企業に与える影響の評価には、重要な見積もりと判断が介在します。付随するリスクはどのように開示すべきでしょうか?

 

TAS 1号「財務諸表の表示」は、主な仮定と見積もりの不確実性に関する情報を、それらの性質及び期末日における関連する資産及び負債の計上額と共に開示することを要求しています。(TAS 1.25)

 

 

 

 

個々の資産及び負債項目に関する事項

 

 

【質問 6】固定資産が洪水の被害を受けました。期末日における固定資産計上額に影響が出るでしょうか?

 

被害を受けた時期によります。
期末日以降に被害が生じた場合:いいえ、期末日における固定資産計上額に対して特段の修正は必要ありません。ただし、適切な開示が要求されます。(影響の発生時期に関するFAQ参照)
会計期間中に被害が生じた場合:はい、期末日における固定資産計上額に影響を与える可能性があります。
TAS 16号「固定資産」によると、利用や処分により将来の経済的便益の獲得が期待されなくなった固定資産について、認識の中止(帳簿価額の減額)を行うこととされています(TAS 16.67 (b))。従って、固定資産が利用や修復が見込めないほどの被害を受けた場合、即時に損失処理しなければなりません。
固定資産を構成する一部が修復不能な被害を受けた場合、当該部分が帳簿上他から独立して計上されいたかどうかに関わらず、当該部分の認識を中止する必要があります(TAS 16.70)。被害を受けた部分に関する取替費用は、取替えが生じた時点で固定資産に計上されます。
TAS 36号「資産の減損」では、資産に物理的な損害が生じた事を、減損の兆候であるとしています(TAS 36.12 (e))。従って、洪水の結果、資産に物理的な損害が生じた時点で、減損テストを行う必要があります。その結果、帳簿価額が回収可能価額を上回る場合、資産もしくはキャッシュ生成単位で減損損失を計上します。回収可能価額は、処分費用控除後の公正価値と使用価値とのいずれか高い金額とされています。また、減損損失は、資産もしくはキャッシュ生成単位の簿価が回収可能価額を上回る金額となります。(この様な考え方は、非上場会社(NPAEs)についても同様であると思われます。)
使用価値の測定に関して、マネジメントは残存耐用年数を通して生じる将来キャッシュ・フローを見積もることを求められます。当該見積もりにあたっては、資産の修復費用、洗浄費用や収益の減少を含む洪水による諸要因を考慮する必要があります。

 

 

【質問 7】洪水により生じる固定資産やたな卸資産に対する修復や洗浄のための見積もり費用を引当金として認識することはできますか?

 

修復費用や洗浄費用は、過去の事象から発生した期末日時点の法的または推定的債務である場合に限って認識することができます(TAS 37)。
期末日以降に被害が生じた場合:期末日において引当金は認識されません。ただし、適切な開示が要求されます。(影響の発生時期に関するFAQ参照)
会計期間中に被害が生じた場合:過去の事象から発生した期末日時点の法的または推定的債務であるであるかどうかによります。通常このような債務は期末日時点では生じていないと考えれるため、修復費用や洗浄費用は、その発生時の費用として認識されるものと考えられます。しかし、賃借資産の原状回復に係る契約内容については検討の必要があります。原状回復義務が過去の事象から発生した現在の債務となり、関連する費用の引当金を認識する必要があります。

 

 

【質問 8】たな卸資産が被害を受けた、もしくは売却可能な状態に戻すために洗浄が必要となりました。関連する費用は決算日時点でのたな卸資産計上額に影響を与えますか?

 

期末日以降に被害が生じた場合:いいえ、期末日におけるたな卸資産計上額に対して影響はありません。ただし、適切な開示が要求されます。(影響の発生時期に関するFAQ参照)
会計期間中に被害が生じた場合:追加費用を考慮した結果、たな卸資産残高が正味実現可能価額を上回るかどうかによります。TAS 2号「たな卸資産」によれば、たな卸資産は、正味実現可能価額と帳簿価額のいずれか低い価額で評価されます。正味実現可能価額とは、通常の営業過程において予想される売価から、完成までに要する見込原価及び必要販売費を控除して算出されます。そのため、当該追加コストを考慮した後の正味実現可能価額が帳簿価額を上回る場合、帳簿価額の減額は求められません。一方で、正味実現可能価額が帳簿価額を下回る場合、正味実現可能価額まで帳簿価額を減額することが求められます。また、たな卸資産を売却可能な状態に戻すことができない場合も、帳簿価額を減額する必要があります。

 

 

【質問 9】洪水で保険を付した資産が被害を受けました。期末日において保険金収入を認識することができますか?

 

期末日以降に保険事故が発生した場合:いいえ、期末日において保険金の認識をすることはできません。ただし、適切な開示が要求されます。(影響の発生時期に関するFAQ参照)
会計期間中に保険事故が発生した場合:状況によります。
企業が何ら制約無く契約上の補償を受ける権利を持ち、その補償を受けることがほぼ確実な場合にのみ、保険金は認識されます(例えば、保険会社が文書上で保険金請求を受け入れ、金額について合意を確認している場合)。もし保険事故が会計期間中に発生し、期末日において保険金の受領及び金額がほぼ確実であった事が財務諸表の承認・サイン前に裏付けられた場合には、TAS 10号における「修正を要する後発事象」として、保険金を期末日において認識することは適切でしょう。
上記の原則により、保険金を認識する時期が、付保資産の帳簿価額を減額した決算期と同じにはならないかもしれないことに留意する必要があります。
認識にあたっては、保険金は対象となる付保資産とは別途に、あるいは関連する負債とは相殺せずに、異なる金融資産として認識される必要があります(IAS32.49 (e))。

 

 

【質問 10】顧客が洪水の影響を受けました。この場合期末日において、貸倒引当金の評価に影響しますか?

 

期末日以降に顧客への影響が生じた場合:いいえ、期末日における貸倒引当金に影響を与えません。ただし、適切な開示が要求されます。
(影響の発生時期に関するFAQ参照)

会計期間中に顧客への影響が生じた場合:はい、会計期間中に発生した事象は減損の兆候となり、マネジメントは売掛金の回収可能性を評価する際、洪水の影響が期末日時点における顧客の支払能力に与える影響を考慮しなければなりません。この評価に、洪水によって影響を受けている担保資産の価値も考慮しなければなりません。
実務的には、マネジメントが顧客の債務返済能力が洪水で影響を受けた事を認知するのは、期末日後かもしれません。しかしながら、もし、支払不能の原因となった洪水が会計期間中に起こったのであれば、その顧客に対する売掛金の帳簿価額は、期末日において適切に調整されなければならなりません(期末日時点において損失は存在していたので)。

 

 

【質問 11】いくつかの投資が洪水によって影響を受けました。これは期末日時点において、投資価値の減損評価に影響を与えますか?

 

考え方は期末日時点における貸倒懸念債権の評価と同様です。
期末日以降に投資への影響が生じた場合:いいえ、期末日における投資価値の減損評価に影響を与えません。ただし、適切な開示が要求されます。
(影響の発生時期に関するFAQ参照)

 

会計期間中に投資への影響が生じた場合:はい、会計期間中に発生した事象は減損の兆候となり、マネジメントは投資価値の減損を評価する際、洪水の影響が期末日時点における被投資会社に与える影響を考慮しなければなりません。
実務的には、マネジメントが被投資会社が洪水で影響を受けた事を認知するのは、期末日後かもしれません。しかしながら、もし、被投資会社への洪水の影響が会計期間中に起こったのであれば、その会社に対する投資の帳簿価額は、期末日において適切に調整されなければならなりません(期末日時点において損失は存在していたので)。

 

 

【質問 12】洪水はのれんを含む無形資産や繰延税金資産の減損の評価に影響を与えますか?

 

洪水の影響が発生した時期によります。
期末日以降に洪水の影響が発生した場合:いいえ、洪水は期末日におけるのれんを含む無形資産や繰延税金資産の減損の評価に影響を与えません。ただし、適切な開示が要求されます。(影響の発生時期に関するFAQ参照)
会計期間中に洪水の影響が発生した場合:はい、洪水は期末日におけるのれんを含む無形資産や繰延税金資産の減損の評価に影響を与えたであろう事が見込まれます。
TAS 38号「無形資産」によると、利用や処分により将来の経済的便益の獲得が期待されなくなった無形資産について、認識の中止(帳簿価額の減額)を行うこととされています(TAS 38.112 (b))。従って、無形資産について、その関連する投資やビジネスが今後の収益を見込めないほどの被害を受けた場合、即時に認識を中止しなければなりません。
耐用年数を確定できないのれんや無形資産は、少なくとも1年に1度減損テストを実施しなければなりません。そして、すべての無形資産は減損の兆候があるときはいつでも減損テストを実施しなければなりません。TAS 36号「資産の減損」において、資産の経済的成果が予想していたよりも悪化し又は悪化するであろうということを示す証拠を、減損の兆候であるとしてます(TAS 36.12(g))。従って、洪水の影響がこのような証拠に該当するときは、減損テストの実施が求められます。資産は簿価が回収可能価額を超えるときに減損する必要があります。回収可能価額は、処分費用控除後の公正価値と使用価値とのいずれか高い金額とされています。また、減損損失は、資産の簿価が回収可能価額を上回る金額となります。
使用価値の測定に関して、マネジメントは残存耐用年数を通して生じる将来キャッシュ・フローを見積もることを求められます。当該見積もりにあたっては、資産の修復費用、洗浄費用や収益の減少を含む洪水による諸要因を考慮する必要があります。

TAS 12号「法人所得税」において、繰延税金資産は将来減算一時差異や未使用の繰越欠損金、税額控除に関する将来において回収可能な法人所得税として定義されています(TAS 12.5)。繰延税金資産は税務当局から回収されることが期待される金額で測定されなければなりません(TAS 12.46)。従って、マネジメントは会計期間における洪水の影響が、報告日時点における一時差異や欠損金に関係する繰延税金資産に与える影響を考慮する必要があります。例えば、洪水は企業の将来収益性に影響を与え、その結果、将来収益による欠損金の回収能力に影響を与えるかもしれません。

 

 

【質問 13】現在ヘッジ会計を適用しています。 洪水の影響に起因して何か会計上考慮しなければならないことはありますか?

 

期末日以降に洪水の影響が生じた場合: いいえ、期末日において会計上影響がありません。 しかしながら、適切な開示が要求されます(影響の発生時期のFAQ参照)。また、マネジメントはヘッジの仕組みや戦略を再評価する必要があります。
会計期間中に洪水の影響が生じた場合: ヘッジ対象のタイプによっては、会計上影響があるかもしれません。 洪水の影響により、ヘッジの効果がなくなったり、将来キャッシュフローが見込まれなくなったりすることがあります。 このような場合、ヘッジ会計の適用をすぐに終了し、それ以前にその他包括利益として認識されていた利益又は損失累計額については、利益又は損失として処理しなければなりません。

 

 

【質問 14】洪水の影響により、ローン契約条項の不履行となってしまいました。何か会計上考慮しなければならないことはありますか?

 

期末日以降に洪水の影響が生じた場合: いいえ。 期末日におけるローンの分類(流動/非流動)は影響を受けませんが、重要な事項について適切な開示が要求されます(影響の発生時期のFAQ参照)。またローン契約条項の不履行は、継続企業の前提に係る全体的な評価を行うにあたって考慮に入れなければなりません。
会計期間中に洪水の影響が生じた場合:  はい、会計上影響があります。  期末日におけるローンの分類(流動/非流動)について、影響を受けることがあります。ローン契約条項の不履行により、貸手はローンの全額即時返済を要求する権利を与えられることがあります。このような場合、貸手が期末日前にこの権利を放棄しない限り、期末日にローンを非流動項目から流動項目に再分類しなければならず、また、適切な開示も行わなければなりません。この権利放棄が、期末日以降に貸手からなされた場合、TAS  10号における「修正を要しない後発事象」に該当し、期末日においては非流動項目から流動項目に再分類した上で、当該権利放棄に関しての開示を別途行うことになります。またローン契約条項の不履行は、継続企業の前提に係る全体的な評価を行うにあたって考慮に入れなければなりません(継続企業の前提に関するFAQを参照)。

 

 

【質問 15】継続企業の前提の評価を行う際に、洪水の影響を考慮する必要がありますか?

 

はい。洪水は、企業の資産、負債及び業務活動に直接的にも間接的にも影響を及ぼし得ます(洪水の影響の評価を行う必要がある企業についてのFAQ参照)。 継続企業の前提の評価を行う際には、この影響を考慮しなければなりません。この評価は、決算が承認・サインされる日において存在するすべての要因を考慮して行わなければなりません。 従って、たとえ洪水の影響が期末日以降に生じた場合であったとしても、その影響は継続企業の前提の評価において考慮されなければならないこととなります。 評価の結果、継続企業の前提が適切でないことが示された場合には、清算や解散等を基礎とした異なる原則に基づいて決算を行わなければならないことがあります。

 

 

 

 

タイ洪水被害に関する会計・税務の質問
jptaxcenter@kpmg.co.th までお寄せください。

 

 

 

[Last updated on 3 November 2011]

 

English Version

The accounting implications of the unusually severe flooding in parts of Thailand